食べることも社会の大きな役割
── 日々の食事が健康の鍵を握るのですから、どのような食べ物を選ぶかも大事ですね。
作物には全て、育つのに適した季節や期間がありますよね。人間の都合でそれを無理やり変えるのではなく、自然の摂理にのっとってゆっくりと丁寧に作られた、質の良い野菜が一番だと思います。そういう野菜は栄養や機能性成分を多く含むことが研究で明らかになっていますし、何よりおいしいですからね。
MOA自然農法のように農薬や化学肥料を使わない野菜なら、安心して皮まで丸ごと食べられますから、栄養面でもとても良いと思います。野菜を自分で調理して、どのような食材を、どのくらい摂取しているかにも意識を向けながら食べることは、一番のセルフケアです。体に良いものを選んで口にすることは、社会にも大きな役割を果たします。
人が何かを食べるためには、まず食物を生産してくれる人が必要です。逆にそれを買って食べる人がいてこそ農業などの第一次産業は成り立ちますし、ひいては自然景観や環境の保護にもつながるのです。それぞれが体に良いものを選んで食べ、健康を維持・増進できれば、医療費削減にもつながります。私たちは食を通して、誰もが何かしらの役割を社会の中で果たしているのですね。
消費者のニーズで生産内容も変わりますから、何を選んで食べるかは社会に大きな影響を与えています。もし、とにかく安いものをという人ばかりが増えたら、日本で作らず輸入した方が良いということにもなりかねません。そうすれば国の未来はどうなるでしょうか。食の安全や栄養面でも心配です。効率よく大量生産するには農薬や化学肥料がたくさん必要です。その使用を否定はしませんが、際限なく使うとしたら人間の体と同じく、何らかの副作用があるかもしれません。
そうしたことを踏まえて食べ物を選ぶ消費者が増えれば、結果として今より安価に、安全でおいしいものを手にできる世の中になるでしょう。日々何をどう食べるかは、私たちがどんな社会をつくっていくかに直結しています。医食農が連携すれば、人と社会の健康につながると共に、全ての人に役割のある、幸せな生き方が見えてくるのではないでしょうか。
── これからの社会に最も求められることですね。ありがとうございました。
みやた・めぐみ
岩手医科大学医学部卒業。医師、医学博士、日本医学放射線学会専門医、日本抗加齢医学会認定医、日本医師会認定産業医、全日本ノルディックウォーク連盟公認指導員。大学病院から過疎地での地域医療まで、幅広い分野の診療を通して食の重要性を痛感。現在は盛岡市のみやた整形外科医院で内科を担当しながら、野菜ソムリエ上級プロの資格も生かし各地で食と健康に関わる活動を行っている。
この記事は機関誌『楽園』77号(2019秋)に掲載したものです