医師・野菜ソムリエ上級プロ 宮田 恵 さん

薬にも匹敵する野菜の改善効果

── 楽しくいろいろな野菜を食べると、知らず知らず健康に……。
 医薬品は作用機序がはっきりしているので〇〇に効果があると説明しやすいのですが、野菜の成分はどのように体の中で機能しているのかの説明は難しい点もあります。例を挙げると、岩手県久慈地区の寒締めホウレンソウはルテインが豊富で、目の健康維持に役立つというヘルスクレーム(健康表示)を持つ機能性表示食品です。どのように作用しているか説明はしやすい。一方、野菜を食べ、消化吸収され、代謝され排せつする過程の中で、生命維持に必要なさまざまな働きをしてくれますが、この機序を説明すると一般の方々には理解しにくい内容です。野菜を食べなければならない理由はたくさんあるのです。
 人の細胞は毎日少しずつ入れ替わっています。私たちの体は食べたものでつくられ維持されていくのですから、食べ物で自分の体を整え、変えていけるのも楽しいことだと思いませんか。
 長い目で見れば、野菜には薬に匹敵する症状の改善効果があると実感してきました。即効性はありませんが、徐々に体調が良くなった、生活習慣病の検査数値が改善し減薬できた、などを経験します。しかも副作用もないのです。

── ご自身が、何か野菜の力を実感されたことがあったのですか。
 大学病院の放射線科医を経て岩手県の小さな診療所で地域医療に携わっていた時、産後に体調を崩しました。どんどん痩せて体力は落ち、肌荒れもひどくて……。その時に唯一おいしく口にできたのが野菜でした。主食のようにして毎日食べているうち、数カ月後には体調も肌も前よりとても良くなっていて、野菜ってすごい力があるんだなと実感したのです。
 地域に根差した診療所ですから皆が顔見知りで、家族状況や生活環境など、お一人お一人の暮らしぶりも感じながら診療に当たっていた頃です。大学病院と違って一人でいろいろな症状の患者さんを担当しますから、若い人にも生活習慣病が増加していることを肌で感じていました。気付いたのは、外食や中食に頼り切りで、家ではほとんど調理をしないこと。
 出来合いの食や加工食品の栄養・機能性成分は低下しており、食事を取っているつもりでも不足が生じてきます。偏った食事が原因で病気になったのなら、その根本を見直さない限り改善していきません。医療と食はもっともっと近い関係にならなければいけない、そのためにも生産者と消費者の距離が近く、安全でおいしい野菜が手に入りやすい社会になれば良いのにと思うようになりました。

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