分かりやすさが実践と継続の鍵
── 生産、流通、消費が一つにつながれば、健康問題解決の一助にもなりそうです。
医療関係者向けに野菜、果物について講義をする機会がありますが、皆さん一様に、野菜は食事療法に必須と考えているものの、品質、鮮度の知識や「どこで手に入るのか」といった情報を持っていません。また患者さんが「料理ができない」場合、指導が困難になると言います。
私は診察の際に、最初は「もっといろいろな野菜を食べましょう。調理が難しいなら洗って食べるだけでも十分」と話すことから始めました。するとどんな野菜が良いかとか、どこで買えるかと聞かれます。「とにかくいろいろな種類を数多く」「この辺りで取れる○○はおいしい」「蒸したり焼いたりなら簡単で、量もたくさん食べられる」といった、世間話の延長のようなことからどんどん会話が広がり、自分で野菜を買って調理し、食べる人が増えてきました。私の住んでいる岩手は新鮮な野菜が手に入りやすいので、実現可能な指導なのだと思います。
── 症状や体調によらず、いろいろな種類を食べるのが良いと。
医療機関では何グラム、何単位などで食事指導を受けることが多く、患者さんの中には実践できない方もいます。またテレビやラジオなどの情報にも振り回されがちです。
「どんな野菜でも良いから、いろいろな種類を、今よりたくさん食べる」という目標はハードルが低く、続けやすさにつながりました。こつこつ繰り返すうちに患者さん自身が体調の変化を感じ始め、検査数値にも改善が見られてくると、本当に野菜で体が変わるんだと実感し、食生活をさらに改めていかれたのです。やはり伝え方の工夫は大事ですね。
── 野菜ソムリエとして、おいしさや楽しさを伝える活動もされて15年ほどになるとか。
医師の食事指導より、野菜ソムリエの話は楽しく聞いてもらえるかなと思ったのです。全国各地の農家さんを回って勉強しつつ、おいしい野菜をたくさん教えていただきました。おいしさとは、その野菜が持つ成分が豊富に含まれていることだと気付きました。
野菜やハーブ、果物などにはそれぞれ、植物にとって有害なものから体を守るために作り出された機能性成分として、独特の色や香り、辛み、ねばねばなどがあります。フィトケミカルと呼ばれるこれらが、おいしさの元です。ゆっくり、丁寧に、心を込めて作られた野菜はフィトケミカルを多く含んでいます。五感で感じたのはもちろん、成分分析でもそれは明らかに違いました。
ナスやブルーベリーのアントシアニン、トマトのリコピン、緑黄色野菜のβ―カロテン、お茶のカテキンなどがよく知られていますね。温州ミカンのβ―クリプトキサンチン、大豆モヤシのイソフラボン、ふじりんごのポリフェノールなど機能性表示されている青果物もあります。