農林水産省担当者迎え自然農法公開セミナー

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静岡県熱海市
みどり戦略の推進へMOAに期待

(一社)MOA自然農法文化事業団(杉本正徳理事長)役員研修会の公開セミナーが2月17日、静岡県熱海市のMOA瑞雲会館で開催され、役員や生産者、流通関係者ら60人が参加したのをはじめ、MOA自然農法の普及会など全国各地にライブ配信され、多くの人が聴講。有機農業取り組み面積の拡大などを通じて安定的な食糧供給を目指す「みどりの食料システム戦略」の推進状況、自然農法・有機農業によるまちづくりの取り組みを学び合いました。

 

 

農林水産省大臣官房みどりの食料システム戦略グループの清水治弥調整官が「持続可能な食料システムの構築に向けて〜みどりの食料システム戦略」と題して講演。地球規模の気候変動、温室効果ガスの過剰排出、肥料原料の輸入依存など、持続可能性に乏しい状況を背景に、資材などの調達、生産、加工・流通、消費の各段階で関わる人たちへの取り組みを促し、2050年までに化学農薬使用量の50%低減、化学肥料の30%低減、有機農業の取り組み面積の割合の25%(100万ha)への拡大などを目指す「みどり戦略」の概要を紹介しました。

 

その上で、環境に優しい農業者であることを証明すると共に税制などで優遇措置を受けられる「みどり認定」など各種推進施策を紹介し、活用を呼び掛けました。加えて、環境と調和の取れた食料システムの確立を図っていく旨を基本法に位置づけることになるなど最近の動きや、環境負荷低減の取り組み事例、92市町村に広がっているオーガニックビレッジの創出状況などを伝え、MOAに対して、同ビレッジのさらなる創出、地域ぐるみで環境負荷低減の取り組みを促進する特定区域の拡大など、一層の取り組みを期待しました。

 

 

自然農法文化事業団の機関紙『MOA自然農法』に連載したエッセーを書籍『自然農法の稲を求めて〜生命をつくる風景、土の力を信じる人々』にまとめ、出版した中井弘和静岡大学名誉教授が報告。自然農法という農業技術、思想、生き方は、地球、人類が危機に瀕する混迷の時代に大きな光になると強調しました。無農薬・無化学肥料の自然農法に適した米の育種に取り組み、生まれた新品種米を紹介し、中でも「くまみのり」にはアトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚炎を癒やし、抑える効果が見られたことなど、書籍の概要を伝え、自然農法がより良く生きる上での糧となるよう願いました。

 

 

オーガニックビレッジ宣言第1号の奈良県宇陀市で有機野菜を生産し、(株)MOA商事とも取り引きする(有)山口農園代表取締役の山口貴義さんが取り組みを報告。農業とは無縁だったものの脱サラして義父の農地を継承、法人化し、現在では56人のスタッフと共にハウス170棟でホウレンソウやコマツナなどを有機農業で生産するに至った経緯をはじめ、共有する社訓、分業制による効率化などの取り組み、農水省が進める「みどり認定」の活用、食品ロスを減らすためのB品野菜の活用、人材育成や地元企業との連携のありようなどを紹介しました。

 

 

高知県で新規就農してよしい農園を営む南国普及会の吉井浩一さんが「母と私の健康を目指して〜何も入れない栽培に至るまで」と題して報告。大病によって市販の野菜を食べられなくなった母が、無農薬・無化学肥料の野菜は喜んで食べることができ、その美味しさを自らも実感、母の有機野菜を確保するべく地元に戻って就農したと経緯を紹介。水はけの悪い農地や海砂の農地などでの試行錯誤の取り組みを経て、緑肥による土づくりによって栽培が可能になったと、そのありようを伝えました。適地適作を基本に、ニンニク、ショウガの栽培、加工の実際を紹介しました。発表者によるディスカッションや質疑応答も行われ、充実した研修会になりました。

 

 

聴講者からは、講演に関して「みどり戦略の政策が以前よりさらに充実しており、とても頼もしく思った」などの感想、事例については「地域、他者全ての人、環境への配慮が素晴らしく、経営者としても大変学びになりました」「失敗例もきちんと話していただき分かりやすかった。農場の声を聞くことや観察することが本当に大事なのだなと感じた」との感想が聞かれました。

 

静岡県函南町でシンポジウム
「なぜみどり戦略に取り組むのか」テーマに

 

3月9日には、「有機農業でつながる人・地域・未来シンポジウム〜みどりの食料システム戦略と有機農業」(主催/同シンポジウム実行委員会)が静岡県の函南町文化センターで開催され、近隣市町の生産者や消費者ら約250人が訪れました。

 

農林水産省大臣官房みどりの食料システム戦略グループ長の久保牧衣子氏が「国が進めるSDGs時代の食料システム〜なぜみどりの食料システム戦略に取り組むのか」と題して、同省農産局農業環境対策課課長補佐の大山兼広氏が「有機農業の拡大に向けて」と題して講演。地球環境がさまざまな点で限界を超えている状況にあって、環境負荷低減を図る取り組みへの協力を訴えました。

 

 

三島市で有機農業・自然農法に取り組む鈴木達也氏、同じく伊豆市の生産者である浅田藤二氏、生産者を対象にした有機農業現地研修会(公財)農業・環境・健康研究所の協力を得て実施する伊豆の国市産業部農林課課長の田代順一氏がそれぞれ取り組み内容を発表。函南町有機農業推進協議会準備会代表の水野昌司氏がコーディネーターを務めて、伊豆エリアの有機農業の普及をテーマにしたパネルディスカッションも行われました。

 

 

温暖化などの影響、生産者の減少と高齢化、地域コミュニティーの衰退など、農林水産業は持続可能とはいえない現状であるだけに、有機農業・自然農法の普及拡大を軸に、生産者、消費者それぞれに環境負荷軽減に取り組み、みどり戦略を推進しようと意識を高め合いました。

 

 

 

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