第14回 生活の質(QOL)に対する岡田式健康法の効果

(一財)MOA健康科学センター理事長
鈴木 清志

前回は、東京療院に通院している高血圧症の患者さんは血圧のコントロールが良く、30%の患者さんで薬の減量/中止ができたこと、そしてその理由として、岡田式健康法の要素である岡田式浄化療法食事法美術文化法のそれぞれが高血圧の改善を促した可能性があると述べました。それでは、岡田式健康法を実践すると健康で幸せになり、生活の質(QOL)は良くなるのでしょうか。

1.QOLを客観的に評価することの難しさ

健康で幸せだと思えるかどうかはQOLを左右しますが、それはかなり主観的な判断に基づいており、客観的な評価は難しいのです。その限界を分かった上で、QOLを測定するための質問票が作られ、広く使用されています。

 

ただ、私たちの研究でそれを使うにはいろいろな制約があったので、より使いやすいQOL調査票(MQL-10)を作成しました。実際にそれを使用する前には、(一財)MOA健康科学センター業務執行理事の木村友昭主任研究員が中心となって、国際的に広く使用されているQOL調査票との整合性を調べて、客観性を高めました(Altern Med Studies. 2012;2:e12、MOA健康科学センター研究報告集2009;13:73-84)。

 

2.QOL調査の方法と結果

本コラム78で紹介した浄化療法の効果と安全性に関する全国調査に合わせて、3カ月以上にわたって岡田式健康法の実践度とMQL-10調査票の記入をお願いしたところ、5,000名以上の方がご協力下さいました。これだけ多くのデータが集まると、かなり客観的な傾向が見えてくるのです。

 

特に興味ある結果をご紹介しましょう。岡田式健康法の3つの要素のどれか1つを懸命に実践するよりも、2つ、さらに3つを一緒に実践する方がQOLは改善しやすかったのです。

 

またそれぞれの要素の実践度を調べると、食事法と美術文化法は実践すればするほどQOLは改善したのですが、浄化療法の施術を受けた頻度とQOLにはあまり関係がありませんでした。また、MOA会員でない方にもこうした傾向が見られたのです。この結果は意外でした。

3.QOL調査の結果から言える岡田式健康法の効果

岡田式健康法の要素を1つより2つ、2つより3つ実践する方がQOLは改善するという結果は、私の経験からも正しいと思います。しかし、浄化療法を頻繁に受けてもQOLはあまり改善しなかったという結果に、あなたは納得できますか。これをどう考えればよいのでしょうか。

 

まずは、MQL-10調査票を含めて、QOL調査票ではQOLを正しく評価できない可能性があります。次に、過去に浄化療法を受けた経験の多少が結果に影響すると考えられます。浄化療法をあまり受けたことのない人たちを対象に調査したら、異なる結果になったかもしれません。

 

さらに、QOLが改善したので浄化療法の回数を減らした人や、QOLが改善しないので回数を増やした人がいたでしょう。そういう人が多ければ、浄化療法の回数が多いほどQOLは低くなります。また、食事法と美術文化法は自分で実践しようとする前向きの気持ちが必要ですが、浄化療法を受けるだけなら受け身で良く、この姿勢の違いがQOLの改善に影響した可能性もあります。

 

今回紹介した研究でも、浄化療法を受けるだけではQOLは改善しにくく、岡田式健康法の3つの要素をバランスよく実践することの大切さを示す結果となりました。MOA会員ならば、他の人に浄化療法を施術する前向きの姿勢が大切かもしれません。

 

詳しい内容を知りたい方は、国際的な統合医療関係の雑誌(J Alternate Complement Med 2019;25:336–345)に掲載された原著を、(一財)MOA健康科学センター研究報告集(2019;23:57-70)に日本文として転載していますので、お読みください。

 

それでは、岡田式浄化療法の効果は、科学的にどこまで証明できるのでしょうか。次回は浄化療法の科学的な事実についてお話しします。

【プロフィール】
すずき きよし
1981年千葉大学医学部卒。医学博士。榊原記念病院小児科副部長、成城診療所勤務、(医)玉川会MOA高輪クリニック・東京療院療院長などを経て、(一財)MOA健康科学センター理事長、東京療院名誉院長。(一社)日本統合医療学会理事・国際委員会委員長。94年日本小児循環器学会よりYoung Investigator’s Awardを授与された。

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