第13回 高血圧症に対する岡田式健康法の効果

(一財)MOA健康科学センター理事長
鈴木 清志

今回のタイトルが、高血圧症に対する岡田式「健康法」の効果であることに気づきましたか? なぜ岡田式浄化療法ではなく岡田式健康法なのかを説明します。

 

ちなみに高血圧は、一般的には収縮期(最高)血圧が140mmHg以上、または拡張期(最低)血圧が90mmHg以上を言います。ただし、続けて何度か測定すると、そのたびに値が異なるのが普通です。血圧はいろいろな要因ですぐに変動するのです。

1.高血圧に対する浄化療法の短期効果

私は以前に心臓病の専門病院にいたので、MOAの診療所に来てすぐに高血圧に対する浄化療法の効果を調べました。具体的には、患者さんの了解を得て、背後から本当の施術をした時と「にせ」の施術をした時とで、血圧の変化が違うのかどうかを調べたのです(図1)。手のひらがどちらを向くかだけなので、患者さんには両者の区別はつきませんでした(プラセボ効果なし)。

 

結果としては、施術の後で確かに血圧は下がったのですが、「にせ」の施術でも同じように下がったので、両者に差はありませんでした。でも実際は、施術を継続して受けると高血圧が改善することが多いのです。それを証明するためには、施術を数年間継続したときの効果を調べる必要があると分かりました。

 

2.東京療院に通院している高血圧の患者さんの経過

日本人の3分の1は高血圧だと言われるほど患者さんは多く、東京療院にも多くの高血圧の患者さんが来院されます。診療を続けるうちに、患者さんの経過にかなりの違いがあることに気づきました。

 

そこで、東京療院に定期的に通院している患者さん(療院群)、他院に定期的に通院している患者さん(他院群)、健康診断等で高血圧を指摘されてもほとんど通院しない患者さん(無治療群)の3群に分けて、来院時の血圧、降圧薬の量、合併症の有無などを調べました。すると療院群の79%は高血圧が改善し、30%は降圧薬を減量/中止できていました。薬を開始/増量したのは10%でした。

 

他院群では61%で高血圧が改善しましたが、降圧薬を減量/中止できたのは2%で、開始/増量した人が28%でした。療院群の方が統計学的に有意に高血圧が改善し、薬は減量/中止できた人が多かったのです。

 

一方、無治療群は、初診時は軽症の高血圧の人が多かったのですが、改善した人は19%にすぎず、20%は悪化し、3名は70歳代前半までに亡くなられました(図2、3)。

 

3.高血圧に対する岡田式健康法の効果

東京療院の患者さんの場合、薬によって高血圧が改善したのではないのは明らかです。では、なぜ改善したのでしょうか?

 

高血圧の原因には、遺伝、ストレス、食習慣(塩分の取りすぎ、野菜不足、酒の飲みすぎ等)、運動不足、喫煙などがあります。両親が高血圧だと子供も高血圧になりやすいのですが、これは遺伝だけでなく、小さい頃から塩辛いものを食べる等の生活習慣も大きいと言われています。

 

東京療院では、来院者に岡田式健康法(浄化療法、食事法美術文化法)の実践を薦めています。療院群の患者さんは、他の群の患者さんに比べて岡田式健康法の3つすべてを実践する人が多く、食事法の基本である素材を生かした薄味で野菜の多い食事に心がけ、美術文化法によってストレスに対応できた可能性があります。つまり、岡田式健康法の3つの要素が、それぞれ高血圧の改善を促したと考えられるのです。

 

こうした事実をもとに、私は患者さんに、浄化療法を受けるだけでなく岡田式健康法を全体として実践するようにお薦めしています。

 

詳しい内容を知りたい方は、(一財)MOA健康科学センター研究報告集(2017;21:59-68)に転載した論文(原著は日本統合医療学会誌(2017;10:186-195)に掲載)をお読みください。

 

次回は、生活の質(QOL)に対する岡田式健康法の効果についてお話しします。

【プロフィール】
すずき きよし
1981年千葉大学医学部卒。医学博士。榊原記念病院小児科副部長、成城診療所勤務、(医)玉川会MOA高輪クリニック・東京療院療院長などを経て、(一財)MOA健康科学センター理事長、東京療院名誉院長。(一社)日本統合医療学会理事・国際委員会委員長。94年日本小児循環器学会よりYoung Investigator’s Awardを授与された。

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