第9回 岡田式浄化療法の効果と安全性に関する国際調査

(一財)MOA健康科学センター理事長
鈴木 清志

引き続き、岡田式浄化療法の効果についてお話しします。

 

2007年に行った大規模な国内調査によれば、からだの痛み・精神症状・自律神経症状のいずれも、日本人では約70%の人が施術後に改善したと答えており、1.男性か女性か、2.施術の場所、3.施術を受けた動機、4.施術時間の4つの条件で改善率は異なりました(前回参照)。これは6万人以上の回答を解析した結果で、しかも予備調査とほぼ同じだった(前々回参照)ので、かなり信頼できる内容です。

 

この調査は日本のほかに、米国、アジア(タイ、台湾、韓国)、中南米(チリ、ペルー、アルゼンチン、メキシコ、ブラジル)、南欧(スペイン、ポルトガル)など、15カ国で行いました。特に米国、アジア、中南米では、それぞれ1,000人以上からの回答を得たので、かなり信頼できるデータです。この結果は、統合医療の分野では最高ランクの医学雑誌「Journal of Alternative and Complementary Medicine」に掲載されました(2020;26(8):708-720)。そして、世界中の専門家から非常に興味ある結果だとの評価をいただきました。(一財)MOA健康科学センター研究報告集(2020;24:21-33)に日本語の報告書があるので、興味のある方はお読みください。

1.研究の目的と調査方法

すでに述べたように、この研究は1.浄化療法で症状がどの程度改善するのか、2.症状が改善・増強しやすい条件はあるのか、などを調査するために計画しました。

 

参加者は30分以上の施術を受けて、その前後で1.からだの痛み、2.イライラ・不安・うつ(精神症状)、3.動悸・手足の冷え・めまい(自律神経症状)の症状の程度を5段階で自己評価するとともに、それらの症状を含めた全体的な症状の変化についても回答いただきました。

2.調査の結果

図1は、全体的な症状の変化を地域ごとに示したものです。からだの痛み、精神症状、自律神経症状のいずれも、改善率自体には数%の違いはあるものの、同様の結果でした。興味深いのは、日本人の改善率が約70%だったのに、アジアと米国では80%以上、中南米ではなんと90%以上だったことです。改善率にこれほどの違いがあったのは、まさに驚きでした。

どういった時に症状が改善しやすかったかを解析すると、図2に示すように、アジア人と米国人では、効果を期待して施術を受けた人では改善率が高かったのですが、中南米人では改善率があまりに高かったためか、改善を促す特別な条件はありませんでした。今回の国際調査において改善率に最も影響した条件は、結局「どの地域の人か」だったのです。施術を受けた動機や施術時間も、改善率に多少影響しました。

ではなぜそれほど「地域」が重要だったのでしょうか。その理由の一つは、いわゆる「手かざし」に対する考え方の違いです。中南米人は何事にもスピリチュアルな考え方をする傾向があり、伝統的な「手かざし」もあるので、浄化療法に違和感があまりなかったと思われます。実際に、浄化療法は初めてなのに効果を期待して受けた人が67%もおられました。また中南米人は痛みに敏感な傾向があり、わずかな症状の変化も見逃さなかったのかもしれません。

別の報告によれば、男性よりも女性のほうがスピリチュアルな考え方をし、痛みにも敏感だそうで、これが日本人では女性のほうが改善率が高かった理由かもしれません。ちなみに、痛みに敏感なことと「痛がり」は別です。私の経験上でも、男性のほうが痛みに弱いと思います。

ここまでは1回の施術の効果と安全性のお話しでしたが、次回からは施術を継続した時の効果についてお話しします。どうぞお楽しみに。

【プロフィール】
すずき きよし
1981年千葉大学医学部卒。医学博士。榊原記念病院小児科副部長、成城診療所勤務、(医)玉川会MOA高輪クリニック・東京療院療院長などを経て、(一財)MOA健康科学センター理事長、東京療院名誉院長。(一社)日本統合医療学会理事・国際委員会委員長。94年日本小児循環器学会よりYoung Investigator’s Awardを授与された。

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