東京工業大学 上田紀行副学長(前編)

自分を知る大切さとこれからの生き方(前編)

東京工業大学 上田紀行副学長 新型コロナウイルス感染症は、パンデミックとなって3年目に突入した。いまだその猛威はとどまるところを知らず、感染により命を失う人も増え、また感染症の症状が治まってもさまざまな後遺症に悩まされている人も少なくない。加えて、この2年間、世界中の多くの人が、自分や家族への感染、仕事や収入、自粛による生活の変化などに対する大きな不安を抱えながら、先の見えない毎日を過ごしている。
 『生きる意味』の著者であり、文化人類学者の上田紀行東京工業大学副学長に、こうした世界レベルの危機を乗り越え、ウィズコロナ、アフターコロナ時代をどう生きていけばよいのかについて話を伺った。

──新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きてから3年目を迎えました。コロナ禍は、多方面で私たちの生活に大きな影響を与え続けていますが・・・。

 

 そうですね。コロナ禍がもたらしたさまざまな悪い点に関してはすでにご承知の通りかと思いますが、生活の変化や人と人との関わりという点に限って言えば、良い面もあったと思っています。

 

 一部の人かもしれませんが、テレワークという働き方ができるようになったことによって、皆が一様に朝8時とか8時半とかのラッシュアワーの電車に押し込められて会社に通勤しなくてもよくなりました。それによって通勤に費やしていた時間を有効に使って効率的に仕事を進められるようになったり、満員電車に乗るという精神的なストレスから解放されました。中には「東京に住んでいなくてもいいじゃない」と、地方へ移住して自然豊かな環境で生活しながら、テレワークで仕事を継続するという方もいます。

 

 ある種の同調圧力的な「一緒にいなきゃいけない」「何時にここに全員そろっていなければいけない」という、自分が消耗するだけの強制された触れ合いといったものからは解放されたわけです。

 

 同時に、これまでに経験したことのないコロナ禍の中で「自分自身とは何者なのか」「自分はこれからどうやって生きていけばいいのか」を考える人が増えていると感じています。これはテレワークをしている人に限らず、ですね。

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