腸内環境を整える発酵食品を食卓に
食生活の欧米化と生活習慣病の増加の因果関係が指摘されるようになって久しい。そうした背景もあり、テレビや雑誌、インターネット上などには、食と健康に関わる情報があふれている。鹿児島女子短期大学の福司山エツ子名誉教授は、伝統的な日本食と日本人の健康に関わる研究を今もなお続け、同時にそれを次世代にもしっかりと伝えるための食育活動にも尽力している。
学生時代から師事していた日本料理研究家としても著名な料理人、茶懐石「辻留」の故辻嘉一氏から茶懐石料理の奥深さとその大切さを学んだという福司山名誉教授に、伝統文化に根差した食生活の在り方や、日本食、特に発酵食品を活用した料理と私たちの健康との関わりについて伺った。
──腸内環境を整えることをうたった食品がブームです。
今、テレビや新聞などで、サプリメントや栄養補助食品の広告を見ない日はありません。食を通して健康の維持増進を図ろうと意識する人が増えていることはとても良いことだと思います。ただ、一人一人の体質も、その時々の体調も違います。欧米人と日本人では体格差がありますし、食べ物の消化時間も異なります。まずは自分自身の体のことを知り、いろいろな角度から「何をどう食べることが健康につながるのか」を、もう一度考える必要があると思っています。
数多くの研究から、腸には全身の免疫をつかさどる重要な役割があること、腸は脳からの指令がなくても消化吸収を行い、感情のコントロールにも深く関与し、それゆえに「腸は第二の脳」であることが明らかになってきています。
そうした腸内環境を整える大切さが知れ渡ってきたこともあり、最近は特に乳酸菌をはじめ、それに関連した食品に注目が集まっています。乳酸菌など腸内環境を整えるのに役立つといわれているものは、私たちが日常的に食べている発酵食品に多く含まれます。特に伝統的な日本食には発酵食品が多く、腸内細菌に有用なものを継続的に摂取できるような献立になっています。