鹿児島女子短期大学 福司山 エツ子 名誉教授

素材の持ち味を生かした家庭料理が基本

──どのような食材を食べれば良いのでしょうか。

 野菜類は、旬とそうでない時とでは含まれる栄養素や味が違いますから、感じるおいしさも変わってきます。私も10年ほど前からMOA自然農法で家庭菜園をしていますが、旬の野菜の持つエネルギーを実感していますし、何よりそのおいしさにいつも驚いています。旬の食材を食べることは、腸内環境を整えて体を健康にするだけでなく、心も満足させてくれるのだと確信しています。
 MOA自然農法の農産物は、地元鹿児島のお店で購入しています。多少形はいびつでも農薬や化学肥料を使用していませんので、安心して食べられます。それに手に取った時に、生産者の真心といいますか、安全・安心な農産物を届けたいとの気持ちが伝わってきます。
 そうした農産物だからこそ、素材の持ち味を生かした料理が大事なのです。日本料理研究家としても著名な料理人・故辻嘉一氏に師事していた時に聞いた話ですが、北大路魯山人は常々、家庭料理は素材の持ち味を生かして手を加え過ぎないことが大事だと言っていたそうです。素材を選び、無理なことをせず、本来の滋味を生かすお総菜こそ家庭料理の本質なのです。
 最後に発酵食品を使い手間を掛けずに作れる鹿児島の郷土料理・「茶節」を紹介します。おわんや湯飲みに麦みそ、かつお節、お好みでネギ、卵や黒糖を入れて、熱い番茶を注いで混ぜるだけです。ちょっと疲れた時に古くから「気根の薬」として飲まれてきました。これ一杯で元気が回復します。発酵食品のパワーを手軽にいただけるので、一度お試しください。

──食から見つめる腸内環境のお話、ありがとうございました。

ふくしやま・えつこ
1938年鹿児島県生まれ。63年和洋女子大学家政学部生活科学科卒業。80年より鹿児島女子短期大学家政学部生活科学科講師、教授などを経て、2009年5月より同大学名誉教授。専門分野は「栄養・調理・応用調理学実習」。最近の研究分野は「茶と食生活」「子どもの食事・高齢者の食事」。鹿児島県食育シニアアドバイザー、よい食・環境 鹿児島県民フォーラム実行委員、鹿児島市食育推進計画策定委員長を務めるなど、食をテーマに幅広く活動。著書に『わたしの食育論〜茶懐石の心に学ぶ』(あさんてさーな)、共著に『新薩摩学12 鹿児島の食の奥義を探る』(南方新社)など。

この記事は機関誌『楽園』73号(2018秋)に掲載したものです

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