鹿児島女子短期大学 福司山 エツ子 名誉教授

減塩でおいしさと満足感が得られるみそ汁

──伝統的な日本食が体に良いのですね

 朝食を思い浮かべてください。みそ汁に使われるみそやかつお節、ぬか漬け、納豆、そしてしょうゆ、酢、みんな発酵食品です。
 みそやしょうゆ、納豆の原料は大豆でタンパク質、鉄分、ミネラル、ビタミンなどを多く含みます。さらにイソフラボンやサポニンなどの健康成分を含んでおり、発酵させることでそのパワーが強くなり、生成された乳酸菌が腸まで届いて善玉菌を増やします。
 みその効能については世界中で注目されており、みその酵母や乳酸菌、大豆の不飽和脂肪酸やイソフラボンには発がん予防効果があるといわれています。実験では、みその褐色色素であるメラノイジンには腸内の善玉菌を優勢に保つ働きがあり、発がん物質を排せつし、抑制する働きがあることも明らかになってきました。
 その他、60歳以上で毎日みそ汁を飲んでいる人は、そうでない人よりも胃炎や十二指腸潰瘍が少ないというデータも発表されています。約2万人の40〜50歳代の女性を対象にした調査の結果、みそ汁の摂取量が多い人ほど乳がんになりにくいとの結果もあります。
 減塩ブームの中で、みそ汁を飲まなくなっている人も多いと聞きます。確かに、1日の目標塩分摂取量は6~8gですが、現在の塩分摂取量は10g前後です。でも、減塩は調理のちょっとした工夫で可能なのです。
 例えば、かつお節などでだしを取り、具だくさんにすることで減塩はできます。一般的な料理本ではかつお節を1~2%と書いてありますが、私の調査では、水の量に対してかつお節を3~4%使うと減塩効果があり、食塩が少なくても十分満足感を得られることが分かりました。発酵食品であるかつお節には、減塩効果の他に満腹効果もありますし、うま味成分のアミノ酸も多く含まれています。4%ものかつお節を使うことは、ちょっともったいないようにも思えますが、減塩とおいしさ、満足感を一度に実現する秘訣(ひけつ)なのです。残ったかつお節はつくだ煮などに再調理しましょう。

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