静岡県熱海市 2026.03.13
「おいしいね」から広がる有機農業と地域の未来
「おいしい野菜は、人を幸せにする」。そんな言葉を実感するような取り組みが全国で広がっています。
2月20日に行われた「全国有機農業フォーラム2026〜オーガニックビレッジへの歩み」で、その一端が紹介されました。会場には全国から多様な立場の参加者が集い、オンライン配信も合わせて約250人が参加しました。
基調講演には、鹿児島県南さつま市の福元雅岳さん(自然農法・オーガニック野菜推進委員会委員長)が登壇。「こんなおいしい野菜、毎日食べたい。もっと食べたい。おじいちゃんみたいな野菜を作れるようになりたい」。農業を志す原点は、祖父が家庭菜園で作ってくれた野菜のおいしさだったと振り返ります。化学農薬の散布後に体調を崩した経験から、有機農法にかじを切りました。

農地も販路も乏しく苦労した就農当初、大きな支えとなったのが地域の人々の助言や励ましでした。2015年には、知人の誘いで「自然農法体験学校・ありのまま分校」に参加。南さつま市が(一社)MOA自然農法文化事業団と協力して開設した学校で、化学農薬・化学肥料に頼らなくても野菜は作れると実感し、MOA自然農法に取り組み始めました。
仲間がいるからこその強みも感じています。400人を超える、ありのまま分校の卒業生がメインとなって立ち上げた「自然農法・オーガニック野菜推進委員会」。作った野菜を一番食べてほしいのは地元の子どもたちだという共通認識から「ありのままお野菜」と名付けて学校給食に納入し、地元スーパーでのPR販売や、ロゴマーク・包装袋などを通してブランディングも進めています。おいしい野菜が人を、まちを豊かにし、有機農業の実践が地域の暮らしに喜びを生む過程に、多くの参加者が聞き入っていました。
事例報告ではまず、農林水産省北陸農政局生産部環境•技術課の首藤裕乃係長がオリジナルプロジェクト「+みどり計画」について紹介。農林水産省が策定したみどりの食料システム戦略を北陸に根付かせる上で、有機農業や農産物そのものよりも「地域の自然や文化の応援」に着目したと解説しました。

地球の環境と食を守ろうと取り組む人や地域をみんなで応援するといった、日々の生活にほんの少し「みどりな考え」をプラスする。消費者と生産者双方が環境に優しい選択を日常化できる仕組みとして、冊子・SNS発信・応援隊制度など多様な入り口を整備し、有機農業や環境保全型農業を「日常の選択肢」として広げていく取り組みが語られました。
続いて山形県高畠町、静岡県伊豆の国市、新潟県佐渡市から、オーガニックビレッジへの具体的な取り組みが各自治体の担当者によって紹介されました。
パネルディスカッション「有機農業によるまちづくりの成果と今後の展望について」には各演者らが登壇し、NPO法人しずおかオーガニックウェブの吉田茂代表がファシリテーターを務めました。

最初に語られたのは、消費者意識の重要性です。まずはおいしく食べてもらうこと。子どもが給食で有機農産物を食べること、乳児への有機農法米の配布など、食べる体験を通して家庭に興味や理解を広げることが、地域全体の意識を変える入り口になると強調されました。生産者同士の仲間づくりの大切さ、地域全体での支え合いにも言及されました。
フォーラムを通じ、有機農業は単なる栽培方法にとどまらず、地域の自然・文化・暮らしを次の世代につなぐ共同作業であり、地域で語り合い、方向性を共有することこそ広がりの鍵であることが浮かび上がりました。
一人一人の小さな選択が、地域を変える力になります。あなたの「おいしいね」が、未来の農業や地域社会を支える一歩になるかもしれません。全国で芽生える小さな変化を、MOAはこれからも応援していきます。
主催/(一社)MOA自然農法文化事業団、共催/(公財)農業・環境・健康研究所
フォーラムをYouTubeで視聴できます(3月30日まで)。






