(一財)MOA健康科学センター理事長
鈴木 清志
前回、遺伝性の難病で根本的な治療法のない鎌状赤血球貧血症が、岡田式浄化療法を継続すると症状が改善し、生存率も上がったことをお話ししました。この結果を国際学会で発表したところ、有名な先生から「これを某大財閥に言えば、研究費用を出してもらえるかも」と言われて、驚いたことを思い出します。コンゴ民主共和国内の諸事情で、研究を続けられなかったのが惜しまれます。
今回は、やはり原因不明の難病である線維筋痛症に対する浄化療法の効果についてお話しします。
1.線維筋痛症とは?
いろいろな検査をしても明らかな異常がないのに、全身の痛みやこわばり、うつ、不眠などの症状に悩まされる病気で、特に白人の女性に多いことが知られており、日本人にも増えてきています(図1)。
原因は、身体的・精神的ストレスなどをきっかけに痛みに過敏になり、さらに脳内で痛みを和らげる反応が鈍くなるためと考えられています。現在のところ根本的な治療法はなく、鎮痛剤や抗うつ薬が一般的に用いられます。カウンセリングなどの心身医学療法、生活習慣の改善、適度な運動などは、症状の改善に役立つとの報告があります。
ポルトガル・MOAポルトクリニックのフェルナンド・サルメント医師たちは、線維筋痛症の患者さんたちが浄化療法を受けると症状が良くなることに気づきました。そこで(一財)MOA健康科学センターからの研究費を用いて、この病気に対する施術の効果を調べることにしました。
2.研究の方法
MOAポルトクリニックに定期的に通院している線維筋痛症の患者さん12名(11名が女性)にご協力いただきました。
施術を受けた期間と受けなかった期間の症状の変化を調べるために、6名ずつのA、B群に分け、A群は前半の3か月間は50分間の施術を週に2回受け、後半の3か月間は施術を受けませんでした。B群は、前半の3か月間は施術を受けず、後半の3か月間は50分間の施術を週に2回受けました。
サルメント医師たちは定期的に患者さんを診察し、痛みやうつの程度と服薬状況を記録しました。痛みの測定には、全身の決められた場所をそれぞれ4kgの力で押して、その時の痛みの程度を「痛みなし(0点)」から「さわっただけで痛む(4点)」で点数化し、その合計点で評価しました(米国リウマチ学会による評価法)。
3.研究の結果
各群の痛みの変化を示した「箱ひげ図」をご覧ください(図2)。前回までの図と同様に、上下の横線は最小値と最大値を示し、真ん中の箱の中にデータの50%が含まれます。箱の中の横線は中央値です。
A群もB群も、施術期間の後で痛みが劇的に改善したことが分かります。さらにA群では、施術を受けなかった後半は、以前ほどではないものの、再び痛みを強く感じるようになりました。痛みが和らいだのは施術の効果だと思えるデータです。B群はA群よりも最大値が大きいのですが、これは痛みを強く訴え、施術後も改善しなかった人がいたためで、他の5人はA群と比べて大きな違いはありませんでした。
11名は以前から薬を服用しており、その中の7名(64%)は施術期間中に薬を減量できました。施術期間後はうつ状態もやや改善しました。
詳しい内容を知りたい方は、統合医療の国際雑誌Altern Ther Health Med誌(2017;23:e7)をお読みください(英文)。またMOA健康科学センター研究報告集(2017;21:51-58)にその論文を日本語で転載しています。
線維筋痛症と同じように、関節リウマチも全身の痛みに悩まされますが、リウマチは痛みだけでなく関節が腫れて変形し、やがて動かせなくなるのでやっかいです。たとえ痛みは和らいでも、関節の変形は進むことがあるので、必要な治療を受けつつ浄化療法を継続することをお勧めします。
次回は、高血圧に対する施術の効果についてお話しします。
【プロフィール】
すずき きよし
1981年千葉大学医学部卒。医学博士。榊原記念病院小児科副部長、成城診療所勤務、(医)玉川会MOA高輪クリニック・東京療院療院長などを経て、(一財)MOA健康科学センター理事長、東京療院名誉院長。(一社)日本統合医療学会理事・国際委員会委員長。94年日本小児循環器学会よりYoung Investigator’s Awardを授与された。