第11回 鎌状赤血球貧血症に対する岡田式浄化療法継続施術の効果

(一財)MOA健康科学センター理事長
鈴木 清志

前回、ほとんどの女性が悩まされる更年期症候群は、岡田式浄化療法を継続すると症状が良くなると申しました。検査結果からは、施術によって自律神経系が安定し、精神的にも落ち着くことで、症状が改善したと思われます。

 

今回は、世界的な難病として知られる鎌状赤血球(SS)貧血症に対する効果についてお話しします。

1.SS貧血症とは?

アフリカ系の人に見られる重い遺伝性の貧血病で、ストレスなどで貧血・疼痛(とうつう)発作が誘発され、全身の臓器が障害されます。専門的には常染色体不完全優性遺伝で、遺伝子の突然変異のために赤血球内のヘモグロビンの構造が変わることで、赤血球が鎌状に変形します(図1)。

 

片方の親から異常遺伝子(S)を受け継いだ子ども(AS)は、鎌状に変形した赤血球が半分以下で症状は軽いのですが、両方の親からSを受け継いだ子ども(SS)はほとんどの赤血球が鎌状に変形し、重篤な症状を呈します。

 

この病気は、マラリア感染症と深い関係があります。マラリア原虫に感染した赤血球は鎌状に変形して脾臓内ですぐに壊されてしまうので、鎌状赤血球貧血症の人はマラリアにかかりにくいのです。マラリア感染症が多発する地域では、特にASの人は生存する確率が高くなります。

 

そうは言っても、鎌状赤血球貧血症の人は、貧血気味で合併症を起こしやすく、SSの人はさらに重症で、20歳前に亡くなることも珍しくありません。根本的な治療法はなく、貧血発作の予防と合併症に対する治療が主となります。

 

コンゴ民主共和国国立混成医療SS貧血症センターのミコビ・ミンガ・ティテ医師たちから、SS貧血症の患者さんに対する浄化療法の効果を研究したいとの連絡をいただいた時、私は良い結果は期待できないのではないかと思いました。でも現地スタッフによれば、すでに何人かに施術をしていて結果が良いというのです。そこで私たちも、研究費を含めて支援することにしました。

 

2.研究の方法

ミコビ医師が勤務する国立SS貧血症センターに通院している患者さんの中で、研究への協力を了承した20名を対象に、2006年から1年間、キンシャサ市のMOAセンターで、月曜日から金曜日まで毎日2時間の浄化療法を行いました(施術群)。対照群として、同じ病院の患者さんの中から年齢と性別を一致させた20名を選びました(非施術群)。この40名の患者さんを、2010年まで定期的に診察しました。

3.研究の結果

各群のヘモグロビン値の変化を示した「箱ひげ図」をご覧ください(図2)。上下にある横線は最小値と最大値を示し、真ん中の箱の中にデータの50%が含まれます。箱の中の横線は中央値です。一般的には、ヘモグロビン値が9.0未満では治療が必要です。

 

研究開始時は両群とも中央値が6.3と重症の貧血でした。非施術群(黄色)はその後も6.1、7.1とあまり変わりませんが、施術群(緑色)は8.4、10.1と上昇し、1年後は最低でも8.9と、劇的に改善しています。施術群は貧血だけでなく、他の臓器の機能も改善し、貧血・疼痛発作も減少しました。2010年には、施術群は死亡が3名で他は落ち着いていましたが、非施術群は7名が死亡し、7名は入院を繰り返していました。

 

この結果が予想以上に良かったので、2009年に40名の患者さんに対して施術を7カ月間継続したところ、やはり貧血は改善し、全身状態も落ち着きました。

 

詳しい内容を知りたい方は、統合医療の国際雑誌Altern Ther Health Med誌(2014;20(1):20-26)をお読みください。また日本統合医療学会誌(2014;7:18-27)には、2009年の結果を含めた内容を日本語で報告し、(一財)MOA健康科学センター研究報告集(2014;18:79-88)にその論文を転載しています。

 

SS貧血症のような重篤な病気に対してこれほどの効果があるのなら、鉄分の不足による貧血はすぐに良くなると思うかもしれません。でも実際は、重症の鉄欠乏性貧血症が浄化療法と食事だけで改善した人はほとんどいません。なぜなのかは私も分かりません。ただ、施術を継続して受けている人が鉄剤を服用すると、劇的に良くなるので驚くことはよくあります。一般的には、健康的な食事を心がけて必要な治療を受けつつ、浄化療法を継続することをお勧めします。

 

次回は、全身の痛みに悩まされる線維筋痛症に対する施術の効果についてお話しします。

【プロフィール】
すずき きよし
1981年千葉大学医学部卒。医学博士。榊原記念病院小児科副部長、成城診療所勤務、(医)玉川会MOA高輪クリニック・東京療院療院長などを経て、(一財)MOA健康科学センター理事長、東京療院名誉院長。(一社)日本統合医療学会理事・国際委員会委員長。94年日本小児循環器学会よりYoung Investigator’s Awardを授与された。

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