第5回 有機・自然農法が作物の成分や動物に及ぼす影響

(一財)MOA健康科学センター理事長
鈴木 清志

 有機・自然農法は土の力を生かす農法であり、MOA自然農法で育てた作物は土の深くまで根を伸ばすので風水害や干ばつに強く、できた作物は腐りにくくておいしいと述べました。今回は、有機・自然農法が作物の成分や動物に及ぼす影響についてお話しします。

1.作物の成分に及ぼす影響


 有機・自然農法では基本的に農薬は使わないので、慣行農法の作物と比べて残留農薬が少ないのは当然としても、重金属が少なかったとの報告も多いのです。有機・自然農法はそれだけ清浄な環境で耕作されているのでしょう。慣行農法の作物を食べたマウスは妊娠率が低かった(J Toxicol Sci 2010;35:49-55)との報告もあるので、残留農薬は私たちの将来にかかわる重要な問題です。
 
 活性酸素は老化やがんを含む生活習慣病に関係すると言われており、それを無毒化するビタミンやポリフェノールなどの抗酸化物質は、アンチエイジング(抗加齢)の視点から注目されています。有機農業の作物には抗酸化物質が多く含まれるとの報告は多い(Int J Environ Res Public Health 2014;11:3870-93など)のですが、気候や環境、農地、収穫時期などによる違いが大きい(J Sci Food Agric 2012;92;2855-69など)との報告もあります。
 
 専門家にお聞きしたところ、やはり土地や季節、その年の気候などで結果がかなり異なるそうです。ただ、その時に聞いた「どれだけ手をかけて育てたかで成分が変わる」との言葉が印象的でした。慣行農法の農家さんも一生懸命作物を作っているわけで、そうした作物への愛情が大切なのですね。肥料が多いと作物中のアミノ酸が増える傾向があり、それも腐りやすさに影響するようです。

2.動物に及ぼす影響


 食材の違いが身体にどんな影響を及ぼすかを調べるためには、有機・自然農法か慣行農法の食材だけを一定期間食べた後で検査をし、その結果を比較する研究が必要です。これを人で厳密に行うのは難しいので、マウスなどの動物を使った実験が意味を持つわけです。今までMOA自然農法の食材による動物実験は行っていないので、有機農業と慣行農法の違いに関する報告をご紹介します。
 
 有機農業の食材を食べたマウスは慣行農法の食材を食べたマウスと比べて、血液中の抗酸化物質が多く(J Agric Food Chem 2010;58:12300-6など)、免疫機能も高かった(J Sci Food Agric 2012;92:2913-22など)と報告されています。また、有機の飼料を食べた牛の牛乳やヨーグルトは、成分が違った(J Sci Food Agric 2012;92:2774-81など)そうです。一方で、飼料の違いよりも、牛にどのくらい手をかけたかで成分が異なった(J Dairy Sci 2015;98:721-46)との報告もあります。有機・自然農法を実施している農家や酪農家の人たちは、作物や牛に愛情を持って接する人が多く、育てる人の愛情や手間のかけ方も成分の違いに影響するということでしょう。
 


 研究によってさまざまなことが分かってきていますが、前回お話ししたように、自然農法の作物は地中深くまで根を伸ばし、腐りにくいなどの特徴があるのに、成分分析をしてもその理由がよく分かっていません。おもしろいと思いませんか? 作物の生命力や農家さんの愛情など、現在の科学では測定できない要素が関係するのなら、自然農法のすばらしさを正しく評価することは当分できないでしょう。
 
 次回は、有機・自然農法が人に及ぼす影響についてお話しします。

【プロフィール】
すずき きよし
1981年千葉大学医学部卒。医学博士。榊原記念病院小児科副部長、成城診療所勤務、(医)玉川会MOA高輪クリニック・東京療院療院長などを経て、(一財)MOA健康科学センター理事長、東京療院名誉院長。(一社)日本統合医療学会理事・国際委員会委員長。94年日本小児循環器学会よりYoung Investigator’s Awardを授与された。

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