世界中の人の寄る辺となることを願って
── マインドフルネスを通して得た絶対的な自己肯定感は、目には見えないものですが、幸せな人生を歩む力になるのですね。
その生きる力を得るために、人は寄る辺を必要とします。禅ではその寄る辺は自分自身ですが、例えば浄土信仰においては阿弥陀(あみだ)様に心からの帰依をすることによって生きる力を得ていくということですし、それは信仰ごとに違います。でもマインドフルネスは、国や民族、信仰の枠を超えて受け入れられていますから、世界中の人々の寄る辺となるでしょう。
自利利他円満について述べましたが、自分がまず幸せになり、そして近くの誰かを幸せにすることができれば、その連鎖によって世界平和が実現していく、そう確信しています。
これからの時代、いろいろな信仰を持つ人たちが手を取り合って世界平和に貢献していくことが必要だと思います。慶應義塾大学の加藤眞三教授が立ち上げられた「信仰を持つ医療者の連帯のための会」にも参加させていただいています。信仰の枠を超えて、スピリチュアルな観点を含めた人々の幸せと健康づくりに医療はいかに寄与すればいいのかを、それぞれの立場から語り合う場です。私もそこで学ばせていただきながら、今後も多くの人にマインドフルネスを伝えていきたいと願っています。
── 自分の幸せが世界平和につながっていくのですね。本日はありがとうございました。
かわの・たいしゅう
1980年神奈川県横浜市生まれ。2005年慶応義塾大学医学部医学科卒業後、精神科医として診療に従事。11年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行を経て14年末より横浜市にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。寺務の傍ら都内および横浜市内のクリニックで、精神科医・心療内科医として禅やマインドフルネスの実践を含む心理療法を積極的に取り入れた診療に当たっている。
この記事は機関誌『楽園』76号(2019夏)に掲載したものです
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「川野泰周オフィシャルサイト」のご紹介
臨済宗建長寺派林香寺の住職であり、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニックの川野泰周副院長のオフィシャルサイトでは、マインドフルネスの講座や坐禅会の案内、著書や掲載雑誌、メディア出演の紹介などの情報が得られます
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