大阪大学大学院医学系研究科 伊藤 壽記 特任教授

医療は治療型から生活支援型へ

── メディアでもセルフケアをテーマとした番組や記事が増えています。
 確かに、セルフケア意識が高まり、病気に対する治療内容も自ら選び、納得して病と向き合おうとする方が増えたと感じています。それと共に、健康とは「病気ではない」というだけでなく「心身の状態に応じてQOL(生活の質)が最大限に確保された状態」だというように、健康の概念が変わってきているのです。 
 20世紀の医療は、病院で全て完結するといった疾病治療型でした。現在は、予防・治療・生活支援を統合的に行うことで健康をサポートする、生活支援型、地域包括ケア型へ変わろうとしています。
 この地域包括ケア型のシステムは、医療、保健、福祉をQOLというキーワードでつなげながら三位一体で進めようというものです。私も所属する統合医療学会では、これを医療モデルと社会モデルに分けて考えることにしました。

── 医療モデルとは?
 近代西洋医学を前提として、補完代替医療(CAM)や伝統医学などを組み合わせてQOLを向上させるものです。医師が主導し、さまざまな職種の人が協力して行います。マッサージや鍼(はり)、アロマ、ヨーガといったCAMの安全性や有効性を実証するため、エビデンス(科学的根拠)を積み重ねることも重要です。

── では、社会モデルは。
 生活モデルと言った方がイメージしやすいかもしれませんね。地域に根差した小規模の診療所やクリニックが、地域社会と一緒になって、単に病気を治すだけでなく予防の考え方を普及させて、人々の健康を底上げしようというものです。

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