自然農法の後継者をめざして

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岐阜県  M・Mさん(37歳、女性)

〔地域のみなさんに自然農法を知ってもらいたい〕

 私が嫁いだM家は昭和30年から自然農法の米づくりと畑作を続けています。幸い、わが家は両親のお蔭で、自然農法で栽培したものが簡単に手に入ります。日ごろの生活の中で、自然農法の米、野菜を食することができ、その味は格別です。収穫の時期には、お友だちを招いて採れたてホヤホヤのお米や野菜など、旬を食べることを大切にしてきました。
 お茶やお花なども気取らずに、その時々の季節を感じながら楽しんでいます。またMOA美術館や静岡県伊豆の国市や長野県阿南町の自然農法実験圃場へのご案内など、自分で楽しいと思うことはお友だちにも声をかけて一緒にやっていくようにしています。
 さらに、地域のみなさんに自然農法を知っていただくとともに、食生活の見直しを進め、お茶やお花などの文化活動を通して心身ともに健康な生活を送っていけることを願って、市民団体「和みの会」を設立しました。

〔「和みの会」でイベントに取り組む〕

 「和みの会」は、“わがふるさとの趣味を楽しんでおられる方々の心温まる作品をみていただきたい”、“ふるさとのよいところを知ってもらいたい”と考え、平成21年3月2日から8日まで県民ふれあい会館を会場に、イベント「人・花・心」を開催しました。
 会場に足を運んでくださる方々に、五感で楽しんでもらえるよう、趣味の展示や特産物の販売にとどまらず、食の試食や音楽、お花の寄せ植え体験も加えることにしました。一週間の行事となりますので、曜日によって内容を少しずつ変えることにしました。生産者の方々をはじめ、あちこち訪問してお願いしたり、また会場のレイアウトを考えたり、設営などの準備は大変でしたが、いろいろと智恵を出し合って進めることができました。
 当日は、新鮮野菜の試食や販売、ふるさとゆかりの演奏家によるランチタイムコンサート、さらに作品コーナーを設けて、いけばなや陶芸、写真、押し花を140点ほど展示しました。特に「物産展」の無農薬で栽培したワサビ、キクイモ、キビ餅やヨモギ餅、手作りの漬け物、パンや米粉製品などが人気を集めました。
 みなさんも「気合が入って楽しめたよ」と言っておられました。また私の知り合いの方々も大勢会場に来てくださいました。この行事は新聞でも紹介していただきました。
 このイベントは同会場で継続して開催することが決まり、来年はお米をメインとして11月に行い、併せて陶芸の展示やワラ細工などの体験コーナーも設ける予定です。

〔自然農法の後継者をめざして〕

 私たちが毎日口にするお米は、健康を維持する上で本当に大切なものだと思います。現代の食生活の乱れは社会問題化していますが、将来を考えると心配です。
 今まで父親が営々と取り組んできた尊い自然農法も、私たち夫婦が引き継いでいかねばならないと思います。そこで私たち夫婦で続けられる農業を考えてみようと思い、今年(21年)の春から勉強を始めました。
 できるだけ作業の効率を高めて、会社に勤務しながら自然農法の稲作りができる方法はないかと考えました。自然農法は除草剤を使用しないので、雑草対策がネックになります。田に入り草取りをしておられる方は本当に大変です。
 5月に私はある月刊誌を読み、アイガモ農法、害虫駆除にハーブを使ってお米作りをしている新潟県十日市市のYさんのことを知り、夫と一緒に足を運びました。Yさんは、「アイガモ農法は網張り、その片付けなどに相当の手間がかかること、またアイガモのフンが水田に適さないことで、タイヤチェーンを活用しての除草に切り替えた」と話してくださいました。私はそのことにはびっくりしました。田植え機にタイヤチェーンを着装した状態も見せていただき、害虫除去のためのハーブもいただいて帰ってきました。
 早速、タイヤチェーンを使った装置を作りました。M家では今年は休耕の年であり、ちょうど近くで、約10㌃の田を借りることができて、試験的にタイヤチェーンを利用しての除草を実施しました。夫にも頼んだところ、「田植え機械の運転ならばやろう」と言ってくれ、仕事から帰ってきてから協力してくれました。
 6月下旬の田植えの3日後から6日おきに計4回実施しましたが、いい結果が出ています。チェーンを引っ張ってない箇所には稗(ひえ)が生えてきているので、その効果がはっきりしています。タイヤチェーンを装備しての除草作業が評判になり、7月8日付けの新聞で報道されました。『若手ら新農法 無農薬に手応え 農家の関心も“つなぎ留め”』というタイトルで、カラー写真入りで掲載されました。また別の新聞社も関心を示されて、収穫を目前にした10月に新聞に掲載されました。読者から「このやり方でできれば助かる」という声をいただきましたし、無農薬の農法ということで、一般の人も興味をもって見学に来られます。
 私はおいしい自然農法の農産物を多くの人に知っていただきたい、多くの農家に栽培してもらいたいと心から願っています。近所のKさん宅の若夫婦も私たちの営みに興味を示し、来年から1町ちかくの水田での稲作に意欲を示しています。
 農家の後継者が無く、若い人たちが農業から離れていく現状に、ささやかではありますが、農業に明るい将来を示していきたいと考えています。

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