岐阜県 K・Yさん(59歳、女性)
〔添加物や保存料が少ない健康的なキムチを手づくりしたい〕
私の夫は昔からキムチが大好きです。最近では、近所の方もご存じで、海外旅行のお土産にキムチをいただくこともあります。
毎度毎度、スーパーでキムチを買っているのですが、値段が安い訳ではないですし、たくさん食べるならば、添加物や保存料が少ないもの、自然農法の食材を使った健康的なキムチの方がいいなと思いはじめ、この数年、何とか手づくりできないものかと考えていました。
そんな思いを私が直接話したのか、お友だちから伝わったのか分かりませんが、平成21年、MOA会員のお友だちのSさんから電話があり、「各務原(かがみがはら)キムチ」の作り方を教えてくれる人を紹介するというお話をいただきました。
「各務原キムチ」は、姉妹都市の韓国春川市から直接作り方を教わって生れた岐阜県各務原市の特産品で、この辺りでは有名なので知っていました。Sさんは各務原市に住んでいて、作り方を教わった人と知り合いなので、私の家で教わることになりました。
〔夫のためにキムチづくりに挑戦〕
当日はSさんがお友だち2人を連れて来られました。教えていただいた「各務原キムチ」は白菜がメインのキムチで、事前に白菜を水洗いして陰干しし、塩漬けにしておく必要があるのですが、その日は、Sさんのお友だち2人が必要な道具一式と一緒に塩漬けした白菜まで持ってきてくださいました。
はじめに、キムチのベースとなる「ヤンニョム」(韓国料理における合わせ調味料の総称)を作り、4等分にカットした塩漬けの白菜に塗り込んでいきました。調理は2時間ほどで終わりました。「ヤンニョム」の材料は、イカの塩辛、昆布、にぼし、ダイコン、ニンジン、ショウガ、干し海老など13種類と多く、調理の手順も多いのですが、漬け物や梅干しを作るなど、手間をかけることが好きな私にとっては、それほど面倒にも難しくも感じることはなく、楽しく作ることができました。
この日は白菜を5~6個分、重さにして10kgほどのキムチを作り、4人で分けて持ち帰りました。2日ほど寝かせたあと、さっそく食べてみましたが、とても美味しくて近所にもおすそ分けをしました。そして、夫にも食べてもらいました。「美味しい」と言ってくれましたが、ほとんどをおすそ分けをしてしまい、わが家には3人家族の1食分しか残っていなかったので、キムチ好きの夫にとっては足りるはずもなく、「今度はいつ作るんだ?」と言われてしまいました。
Sさんのお友だちからレシピをいただいたので、それからしばらくは、教えていただいたキムチづくりを参考にして一人で何度か挑戦しました。レシピ通りに忠実に作れば本当に美味しくできるので、近所のお友だちを誘って、一緒に作るようにもなりました。
〔食育セミナーにも取り入れる〕
平成22年の秋、旬の白菜が食べられる季節を迎えました。夫のために自分で手づくりキムチを作れるようになった私は、今度は“わが家で作るときは、友だちが来ても2~3人が精一杯。もっと広い場所でたくさんの方とキムチづくりができたらいいな”と思うようになりました。
そこで、地域のMOA健康生活ネットワーク(以下、ネットワーク)の方々に相談しました。私たちのネットワークでは、地域の公民館を使ったボランティア活動として、食育セミナーを開催しています。私がこれまでのいきさつや思いを話すと、みなさんは「次のセミナーは思い切ってキムチづくりをやってみよう」と言ってくださいました。そして、ネットワークの協力をいただきながら、食材集めやお友だちへの呼びかけなどの準備を進めていきました。
食育セミナーを開催するにあたり、食材はネットワークの希望で、できるだけ無農薬や減農薬の野菜や調味料を揃えるようにしました。ただ、開催時期が1月下旬となり、メインとなる白菜が用意できるかが不安でした。それでも、ネットワークのみなさんがいろいろ努力してくださって、美濃市の自然農法実施農家のEさんから白菜1kgあたり100円でいただけることができたり、市内で同じく自然農法をされているNさんからダイコン、ニンジン、ショウガなどの食材を分けていただくこともできたりと、大半の食材を自然農法で作られたもので揃えることができました。わが家でセミナー用の白菜20kgを塩漬けにする準備も、夫をはじめ、みなさんが手伝ってくれるなど、本当にネットワークの協力をいただくことができ、ありがたく思いました。
〔生命力あふれる食材を使うことが健康につながる〕
実際に私たちが作った手づくりキムチを試食してもらいながら、それぞれが近所やお友だちに参加を呼びかける中、セミナー当日は19名の参加がありました。
はじめに、私たちの地域のネットワークを担当してくださっているスタッフのWさんから、岡田式健康法の食事法についての説明をしていただきました。食事法には、①生命力あふれる食材を選ぶ、②食べ物と作る人に感謝して食を楽しむ、③うすあじに心がける、④米などの穀類や野菜を食べる、⑤食事と運動のバランスに気をつける、という5つの実践を提案していますが、特にWさんは新鮮なもの、旬のもの、地産地消の地元のもの、自然農法のものなど「生命力あふれる食材」を使うことが、美味しいだけではなく健康につながることを話していただきました。そして、「今日のキムチの食材は有機野菜、無農薬の自然農法の新鮮な生命力あふれる食材を揃えることができたので、楽しみながら美味しいキムチを作ってください」と参加者に呼びかけました。
お手伝いをするネットワークを代表して、私からはキムチづくりの具体的な手順をお話させていただきました。それからみなさんは、4つのテーブルに分かれて作りはじめました。事前に白菜の塩漬けができていましたので、残りの手順はヤンニョム作りと、ヤンニョムを白菜に塗って漬け込む作業だけでしたので、スムーズに行われました。
初めて顔を合わせる方々ばかりだったのですが、一緒に調理をすることでだんだんと緊張もほぐれていったようで、最後の方は和気あいあいとした雰囲気で、とても楽しそうでした。作り終えたみなさんの顔は本当にいい表情をされていました。
キムチづくりが終わるのを見計らって、ネットワークメンバーのFさんやOさんが用意していただいた自然農法のご飯と2年前にネットワークで作った手作り味噌の味噌汁、そしてキムチづくりで残ったイカの足を使ったおかずで、昼食を出しました。みなさんはご飯も味噌汁も「美味しい!美味しい!」と言っていただきました。
〔開催してみた感想〕
参加された方からは、「キムチづくりができて嬉しい、本当に楽しかった」「こんなに楽しい料理教室は初めてです。これからも誘ってください」「初めてキムチづくりを体験しました。ワイワイ言いながら楽しく作れました」「わが家はキムチが大好きです。一人では作れないので、また誘ってください」「キムチは、発酵食品なので身体にいい食べ物です。こんなに簡単に作れるのなら近所の方にも教えてあげたい。今度は味噌づくりにも参加させていただきます」などの感想をいただきました。今回は、白菜を格安で購入でき、参加費700円で白菜半分もあるキムチを持ち帰ってもらったこともあって、私たちが思っていた以上にみなさんに喜んでいただけたようです。
今回の食育セミナーは、講師という講師がおらず、キムチづくりという初めてのメニューだったので、開催する私たちはとても勇気がいり、準備も大変でした。しかも単に料理をするのではなく、岡田式食事法の5つのポイントを意識したものでした。“生命力あふれる食材を使い、楽しく作る、楽しく食べることが健康にもつながるはず”。そんな思いを持って開催しましたが、その願い通りの成果があったと思っています。食生活は「心身の健康」につながるものだという考えを持ちつつ、今後もネットワークで食育セミナーを続けていきたいと思います。