佐賀県 S・Aさん(62歳、女性)
〔生産者との話し合いから、自然農法の野菜の拠点配送が始まる〕
平成15年から16年にかけて、社会で「地産地消」という言葉とその取り組みが話題になっているころ、私たちのMOA健康生活ネットワークに対して、MOA自然農法文化事業団のスタッフから「自然農法について一緒に学んでみませんか?」と提案いただきました。
勉強会を3回ほど積み上げました。その折、農家の方々が自然農法で生産した野菜の中には、品質が良くても形が整ってなかったり、大きさが規格外などの理由から出荷できないものを、そのまま畑にすき込んでいるという状況を聞かせてもらいました。“それはもったいない”“農家の方々にあまりにも申し訳ない”と思いました。そこで、農家とスタッフ、健康生活ネットワークで話し合う中で、生産者の方々を応援し、そのご苦労に報いるためにも、市場に出せない野菜を消費者がグループを作って購入することになりました。
具体的には、月2回、ネットワークの中心的存在であるTさんに各グループの注文をとりまとめていただく。そして、各グループ長がTさん宅で仕分けされた野菜を取りに来て各家庭に配る。こうした「拠点配送」というシステムが出来上がりました。Tさん宅に集まる野菜の量は、多い時には広い部屋中いっぱいになることもありました。
「拠点配送」に合わせて、年に1~2回程度、ネットワークで農場を訪問し、農家の方々の自然農法にかける思いやご苦労された体験などを伺ったり、そうした生産者の声と消費者の感謝の思いをつなぐ新聞を発行するなど、さまざまな交流を続けてきました。
〔夫が「前立腺ガン」と診断される〕
夫(現在69歳)は平成12年ごろ、「前立腺肥大」と診断されました。そして、平成19年3月、尿意があっても全く排尿できなくなり、自宅近くの個人病院で診てもらったところ、前立腺ガンの疑いを指摘されました。スクリーニング検査(血液検査の一種)を経て、県立病院に1日検査入院し、針生検の結果、担当医師から「確実に前立腺ガンです」と診断されました。
PSA値は66ng/mlg もありました。普通の数値は3ng/mlgくらいだそうです。担当医師から「治療法は服薬(オダイン・ハルナール)と月1回のホルモン注射(女性ホルモンの入った注射)です。そして早めに放射線治療を受けた方がいいですよ」と言われました。
その場に私も同席していたため、「ガン」と聞いて大きなショックを受け、“これは大変だ、もしかしたら治らないのでは”と非常に不安になりました。
〔夫が鹿児島療院*に入院する〕
そのような状況の中で、私から鹿児島療院(現:南九州療院)にあるクリニックへの入院について相談してみましたが、夫は仕事一筋の人で「命より仕事の方が大事」と言って、入院には前向きではありませんでした。夫婦で信頼をよせているTさんが、健康生活ネットワークのYさんの例を挙げて説明してくれました。
Yさんは末期のガンと診断されて鹿児島クリニックへ入院しました。退院後も療院と健康生活ネットワークが連携を取り合いながら、岡田式健康法を中心に身の回りのお世話もさせていただきました。Yさんは積極的に自然農法の野菜や果物を食べて「とても美味しい」と喜ばれ、最後まで食欲がおちることはありませんでした。
TさんはこのYさんの例を話した後に「鹿児島クリニックで一度診てもらった方がいいでしょう」と言われ、夫はしぶしぶ入院をお願いすることになりました。
私も、家族で力を合わせて、ネットワークの方々の協力をいただきながら、“夫のガンに向かっていこう”と思えるようになれました。
5月になって、夫は鹿児島クリニックに、ガンによる精神的不安を抱えながら、生活習慣の改善を目的とした教育入院をいたしました。M医師の診察、看護師からのカウンセリング、管理栄養士の生活指導、また療院での浄化療法療法士の献身的なケアを受けながら入院生活を送りました。
夫は、「M医師は私の身体を自分のことのように心配し、丁寧に診察してくださった」と感謝しておりました。そして「医学的なことについては今かかっている病院の担当医師に任せるようにした方がいいですよ」とアドバイスを受け、「病気症状についてM医師からわかりやすく説明していただき、よく理解できた」「M医師は素晴らしい」と口癖のように言っていました。
また、管理栄養士のKさんは、食生活の改善に向けた指導とともに岡田式食事法による改善事例を紹介してくださり、「これらは肉や卵などの動物性食品を摂らないで、自然農法の食材を使った菜食によって病気症状が著しく改善した事例です」「家に帰ってから実践してみてはどうですか?」と親身になってアドバイスしていただきました。
関係のスタッフのみなさんから優しく親切に接していただき、本当にありがたく思いました。
〔わが家の食生活の改善〕
夫は服薬による肝臓負担軽減のために、それまで仕事から帰って楽しみに飲んでいた1本のビールを止め、野菜および豆腐や豆乳などの大豆製品を主菜とする食生活を実行するようになりました。さらに夫は加工食品に記載されている栄養成分表示をみて、使用されている食品添加物や着色料など、一つ一つ確認し、できるだけ使われていないものを購入するように私に注意を促すようになりました。
私自身、野菜中心の料理を作るのに気をつけたことは、植物性の材料である昆布と椎茸で「出汁づくり」をしたことでした。そのため、出汁をあらかじめ作り置きしておくことで、私が留守中でも、娘が安心して料理を作ってくれています。また、最近では、味が良く栄養価の高い乾し野菜も使うようにしています。
元々、私は高校で好きな調理の勉強をしたこともあり、夫の料理を作ることは全く苦になりませんでした。夫は「俺は料理できないから、洗い物ぐらいはするよ」と言って、感謝の気持ちから食器洗いをしてくれています。そして、同窓会や旅行の時にも自宅から弁当を持って行き、決して旅館の料理を口にすることはありません。
こうした食生活を続けられた背景には、月2回、「地産地消」の野菜が購入できるというシステムを作っていただいたおかげと、心から感謝しています。
このような食事法の継続とともに、毎日必ず浄化療法を受ける中で、夫の体調は以前とは比べものにならないほど良くなりました。当初、夫は服薬と、毎月1回ホルモン注射を受けていましたが、最近は服薬と、ホルモン注射は4ヶ月に1回となりました。そして、2ヶ月に1回、PSA検査を受けてきましたが、検査のたびに数値が下がり、2年前に数値が0.00となり、その時点から、県立病院の担当医師も「放射線治療をした方がいい」というアドバイスをされなくなりました。その後も数値は同じ状態で、現在に至っています。
これは、病院での治療と岡田式健康法を続けたおかげだと思いますし、夫の食事は野菜中心であるため、自然農法の野菜は安心・安全だけでなく、農家の方々の真心と愛情が込められており、「夫の命の源」だと言っても過言ではないと思っております。
〔地域に「地産地消」の輪が拡がり始める〕
自然農法の野菜を中心にした食生活が、いかに有意義なものであるか、私が実感したことを近所の方々や友だちに伝えることで、地域に「地産地消」の輪が広がっています。
最近まで勤めていた保育園でお世話した園児のお母さんがわが家に来られましたが、3歳になるアトピーの子どもさんがいて、「よい食材が手に入らない」と言われたので、「自然農法の野菜が手に入るのよ」とお話ししました。お母さんは大変興味を示して、すぐに野菜やMOAの納豆、豆腐、お菓子を注文され、「とても美味しかった」と喜んでおられます。
私の従姉妹が訪ねてきた時、たまたま自然農法の野菜の申し込み用紙がファックスで届き、「値段も手ごろで、健康に関心がある」と言われ、一緒に注文するようになりました。従姉妹は、友だちにも自然農法の野菜を紹介し届けてくれています。私が「健康配達人だね」と言うと、笑顔で「みんなに喜んでもらっているから」という言葉が返ってきました。私は“健康な身体は、安全な食物から”という思いで伝えるようにしています。
さらにわが家の経験から、お友だちのみなさんに“より健康になってほしい”との思いから健康生活ネットワークで実施している健康増進セミナーに案内をしています。平成21年に開催された健康増進セミナーに参加された保育士のFさんは、岡田式健康法に興味を持たれ、光輪花クラブというお花の教室に参加したり、浄化療法の3級療法士の資格講座を受講されました。職場で上司や同僚に浄化療法を紹介し、自分も「勉強中だから」と伝えながら浄化療法を施術されているそうです。そして、浄化療法を受けられた方には、「地産地消」の野菜や果物を届けられており、みなさんから「ありがとう」「美味しかったよ」という言葉をもらい、とても嬉しかったと話してくれました。
Tさんから「以前、拠点配送を利用している家庭の軒数を確認してみたら98軒を越えていた」「今は拠点先で掌握しているため正確な数はわからないけど、100軒は越えている」と伺いました。「地産地消」の輪が拡がっていることがわかります。
心や身体に病を抱えている多くの人に、岡田式健康法を積極的にお知らせしていきたい、そしてみなさんが健康になってほしいと願っています。
*鹿児島療院=現・南九州療院