山口県 T・Iさん(62歳、女性)
〔精神疾患を患ったAさんへの取り組み〕
平成14年にご主人の仕事の関係で転勤して来られたAさん(44歳)とは、私たちの健康生活ネットワークのお仲間として、お付き合いをしてきました。平成15年4月に小学生の娘さんが急病で入院したことがきっかけとなって、Aさんは急な不安感に襲われるようになりました。息苦しさ、動悸、めまいなどの発作が起きるようになり、誰かがそばにいなければならないような状態でした。
幸い、娘さんは数週間で完治しましたが、Aさんの症状はますます重くなり、病院で診察を受けると「パニック障害」と診断されました。さまざまな治療を受けられたようですが、改善はみられませんでした。Aさんは買い物や子どもの学校の行事なども制限しなければならないようになり、この病気のために夫婦の中にも心のすれ違いが起きるようになり、とても気の毒な状況でした。
平成15年11月17日、私はAさんをMOAのセンターで毎月1回行われている健康増進セミナーに案内しました。セミナーでは岡田式健康法の実際を体験していただきました。受付を済ませた後、お花をいけ、浄化療法を受けてもらいました。お昼には自然農法で生産されたお米やお野菜を使った食事を食べていただき、食後にお茶を一服していただきます。午後から、事前に記入していただいたアンケートにもとづいて、スタッフとAさんと私で、日常生活の中で岡田式健康法をどのように取り入れていくことができるか話し合いました。
Aさんの状態をネットワークのみなさんも大変ご心配されて、「何か私たちもお手伝いできるようであればおっしゃってください」と言葉をかけてくださいました。みなさんと話し合い、それぞれが時間を工夫しては、ご自宅にお見舞いに行き、お花を届けたり、浄化療法を施術しました。そして、少しの時間でもそばにいてあげようとしたり、時には一緒に買い物へ行ったり、食事を作ったりさせていただきました。
〔体調の回復〕
Aさんは毎月健康増進セミナーにも参加され、回数を重ねるうちに体調も回復していかれました。はじめは、セミナーに参加した人と一緒に食事をすることもできなかったのですが、回を重ねるごとに食事を一緒に楽しめるようになりました。
体調が悪くて家事ができないため、コンビニ弁当に頼っていた食生活も、朝のうちに自然農法で生産されたお米でおにぎりを3食作って食べるようになりました。
また、食卓のテーブルや各部屋に花を飾り、花を楽しむ心の余裕も少しずつですが生まれてきました。
平成17年2月、Aさんがご主人と一緒に健康増進セミナーに来られました。ご主人は体調がすぐれず食欲がなかったのですが、岡田式健康法を体験する中で食欲が戻り、お出しした昼食を「おいしい」とおっしゃって完食されました。そして、「すっかり気持ちがよくなりました」と言われました。
それからは、私たちとAさんとご主人を交えて話し合いが持てるようになりました。
そして、話し合いを続ける中で、ご主人はAさんが人の手を握りしめていないといられないほどの不安感を受け止めてあげることの大切さに気づかれるようになりました。Aさんも、今までご主人や子どもさんが協力して家事を担ってこられたことや、発作のたびにご主人に帰宅してもらったことなどを感謝されるようになりました。
家族の協力の大切さを強く感じられるようになったAさんの体調は、このころから目に見えて良くなっていかれました。毎月通っている主治医からも「徐々に良くなっていますよ」と言われているとのことです。
〔花サークルや食育セミナーなどの活動を始める〕
花によって癒されることを実感したAさんは、平成18年5月から自宅に娘さんの友だちを集めてお花のサークルを開くようになりました。
また、健康生活ネットワークの自然食推進員、栄養士、調理師のみなさんが開催している親子料理教室にも参加されるようになりました。Aさんの自宅の家庭菜園で、サークルの子どもたちと育てた玉ねぎを使ったシチューづくりや和食の基本を学ぶ体験などを行い、毎回お友だちの親子が喜んで参加されました。
サークルや料理教室は、娘さんが卒業する平成20年の春まで続けられましたが、保護者の中から「子どもが礼儀正しくなった」などの喜びの声をいただくことができました。
今ではAさんは、娘さんの運動会に行くことができ、運転免許の更新で2時間の講習を不安なく受けられるまでになりました。一人で家にいられる時間も増え、健康増進セミナーやMOA美術館児童作品展のボランティア活動にも参加されるようになりました。
7年間の取り組みの中で、心身の回復とともに普段の生活を取り戻し、感謝の心が家庭を一つにし、更には人に尽くす生き方にまで変わられたことに、大きな感動を覚えます。