家庭菜園から「大自然のはたらき」を実感

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東京都  S・Mさん(41歳、女性)

〔家庭菜園に取り組む〕

 平成9年3月27日に三多摩の地域に適した農産物の栽培技術を開発し、自然農法農産物による地産地消の普及拡大を願い、MOA自然農法S普及会が発足しました。
 発足当時の代表役員は生産者で構成されていましたが、10周年を前に大幅な役員の「若返り」が検討されて、生産者のI農園の直売所に頻繁に野菜を買いに行っていた私が、消費者を代表して役員に指名されました。
 普及会の役員を受けて、私自身が自然農法を体験することが必要ではないかと考えるようになり、わが家の庭を使って家庭菜園を始めました。
 自宅に隣接する土地の所有者である年配のご婦人が、時々畑仕事に来られ、わが家の家庭菜園を覗き込み「畑仕事が好きなんだね・・・」と話しかけられ、それがきっかけになってお茶飲みをするほどの仲良しになり、100坪ほどもある広い土地を無料で借りられることになりました。
 その方が生産者Iさんの叔母さんにあたる方だと知った時には、大変驚きました。
 今年で家庭菜園歴5年になりますが、最初のころは土ができていないのに、自然農法の野菜を作ろうと力を入れすぎたせいか、欲するままにたくさんの種類の種を植えて、いろいろな虫が発生し、成育不足も多く失敗を繰り返しました。
 “土作りをしたのにどうしてだろう、植え方が悪いのだろうか”と思いながら、試行錯誤している間に2年ぐらいが過ぎました。悩んだ末、自然農法の勉強をしなおしました。
 土作りをしてから、土の中で生態系が整えられていくのにじっくりと作物を育てる必要があることが分かり、納得できました。それまではいろいろな作物を育てようとして焦っても無理なこと、毎年変動する自然条件によって時期を見極めることが重要など、少しずつ実践を積み重ねてきました。
 春から秋にかけては畑作業も忙しくて、畝作りなどは力仕事です。作物の水分補給も大事なので、天気予報にも注意を怠ることができません。
 そのころから、一緒に畑を共有して家庭菜園を実施している方に、「エダマメの実のつきも良くて、味も良いね」と言われ、自然栽培はエダマメからだと気づきました。以前、自然農法の生産者のH農園に見学に行った際に、「エダマメの後作はダイコンがよい」と伺っていましたので、「春に黒マルチを張ってから1年間、ダイコンの収穫までマルチを使用できる」と聞いて試してみました。エダマメの根粒菌が上手く作用するらしく、夏にエダマメを抜いた所にそのままダイコンの種をまくと、無耕作で冬にはダイコンが収穫できました。

〔家庭菜園の楽しみ方〕

 こうして土作りが進み、作物の生育に適してくるに従って、様々な野菜が育つようになってきました。またご近所の方々も興味を示されるようになりました。ブロッコリーやキャベツは、毎年ご近所の方が、苗づくりをしてくださるので感謝しています。
 家庭菜園は作るのも楽しいですが、食べるのが一番の楽しみです。自分で育てた野菜は、たとえ形が悪くて、虫に食われていても、とれたては味も濃くて、料理するのも楽しくなります。畑でとれたものを中心に、料理メニューを考えることもしばしばあります。
 自分たちだけで楽しむのはもったいないので、畑の作物がたくさん収穫できそうな時には、なるべく近所のお友だちも呼んで作業をすることにしています。ジャガイモ掘りは子どもたちに声をかけ、サトイモの時期には、サトイモ好きのファミリーで集まります。収穫だけではなく、作付けにも来てくれるリピーターもいます。また、夫の職場の同僚や上司の方も来てくださり、妻としては緊張と嬉しさが交互に入り交じった心境です。
 収穫に参加される近所に住む方の中に東北出身のご主人がいて、郷土料理が得意なので本格的な「芋煮」を作ってくださり、それが子どもさんを連れて参加されている方々に喜ばれ、美味しいものを食べて畑仕事の楽しさも味わい、信頼関係も深まるという状況になりました。
 今年はご近所の人が、トウモロコシが好きだというので、収穫したものをお分けするだけでなく、一緒に畝を作って種まきからやろうと話しあっており、今から楽しみです。
 それから、夫がわが家と同じく家庭菜園に興味のあるKさんに声をかけて、月に1度「自然農法・家庭菜園勉強会」が始まりました。MOA自然農法文化事業団が行なっている「家庭菜園の通信講座モニター」に昨年参加した際のテキストも活用しています。そのテキストは写真もきれいで、わかりやすい内容なので、これからも楽しく勉強会ができると思います。

〔料理教室を開催する〕

 さらにご近所の方々と自然農法の食材を使った料理教室をして、食生活を楽しみたいと考え、近所の若手の婦人たちで作った「ぐりんぴぃすの会」のGさんとTさんにお話しをしたら「面白そうだからやってみよう」ということに話がまとまりました。
 講師をどうしようかという話になり、私はI農園の奥さんに協力をお願いしてみようと思いました。それは、I農園で農産物を買うたびに、奥さんがその食材を使った料理のレシピを教えてくださったからです。また、以前から奥さんが栄養士の資格を持っていると知っていましたので、ご協力いただけないかと考えました。奥さんとは、I農園に消費者としての援農の回数を重ねるうちに、子どもを持つ母親同志ということで仲良しになっていました。わが家には一度も来ていただいていないので、昼食を食べながら料理教室の協力をお願いしようと思いつきました。
 初めて家に来られ、食事をしながら語り合う中で食育に興味をお持ちの方だと分かりました。
 平成21年12月15日に市の文化センターを使用して、第1回目の料理教室を行いました。準備は早く来た参加者の方々と世間話しで盛り上がりながら楽しく行ないました。地産地消を基本とした食育を意識して、I農園で栽培された野菜を使用しました。
 I農園の奥さんが考案してくださった献立は、参加されたお友だちに大変好評でした。また、できあがった料理をランチョンマットに並べ、お花を飾ると、参加者のみなさんはとても喜ばれました。最後にお花も持ち帰ってもらうのですが、不思議と長持ちしたと感想をいただきました。参加者のみなさんは、何でも語り合える雰囲気が気に入ってくださっている様子でした。
 第2回目は平成22年3月23日に同会場を使用して開催しました。特に工夫はしていませんが、2回目の参加ということで打ち解けた雰囲気の中で、参加者から質問が多くありました。特に料理教室で使っている自然農法で栽培されたお米が美味しかったと好評で、お米の大切さについて話し合いました。

〔仲間づくりを進めて、さらに地産地消、食育活動の充実を〕

 いつもMOAの醤油を購入されるお友だちで、アレルギーの症状のあるお子さんがいる人は、この会のお誘いをした際にお米のキャンペーンのチラシもお渡ししたところ、興味を示されて、まずはヘルシープラザ(自然農法で生産された野菜・果物や加工食品などを取り扱っている自然食品店)で買ってみるとのことでした。
 まだ始まったばかりですが、仲間作りを進めて、さらに地産地消、食育活動の充実ができれば良いと思います。
 菜園を始めたころ、伊豆の国市にある大仁農場に、家族で家庭菜園用の圃場見学に行きましたが、“いつになったらこんなふうになるのかな”と思いました。さらに大仁農場は環境に対して、循環型システムの農業を進めていると聞いていますが、家庭菜園を楽しむことは、自分たちの生活環境を循環(作物を育て、収穫した作物で体が作られ、その体で作物を育てる)させて、心も体も健康的にしていくと思います。まだまだ課題はたくさんありますが、今後も楽しく続けていきたいと思います。

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