自然農法大会in南さつまに市民ら300人超

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鹿児島県南さつま市
自然農法を学ぶ「ありのまま分校」10周年を記念

鹿児島県南さつま市の県立加世田常潤高校で11月17日に「自然農法体験学校ありのまま分校開校10周年記念 自然農法大会in南さつま」が開催され、市民や農業・行政関係者など300人を超える参加者が集いました。

 

 

ありのまま分校は、市内の農業高校である加世田常潤高校の校外農地を使い、(一社)MOA自然農法文化事業団が技術指導を行って有機農業の担い手を育成。過去9年で370人が卒業し、自然農法・有機農業の生産者を輩出しています。南さつま市は2023年3月に農林水産省が進めるオーガニックビレッジを宣言しており、今回の大会では自然農法・有機農業のさらなる拡大を願って、同分校10年の取り組みを紹介しました。

 

 

 

オープニングセレモニーは同高校の研修農地で行われ、本坊輝雄市長の開会挨拶、塩田康一鹿児島県知事の来賓挨拶に続いて、橋本聖子参院議員、吉田幸一ありのまま分校長を加えた4人で10周年の記念スコップにサインを入れました。各来賓と同高校の生徒代表が農地に腐葉土を投入するセレモニーを行い、さらに参加者も畑に入って一緒にタマネギの苗の定植を行いました。

 

 

同高校の体育館に会場を移して、橋本議員が「自然農法、有機農業を中心にして〜予防医療・健康なまちづくり・地方創生へ」と題して基調講演。東京五輪で取り組んだ出場選手の健康管理を例に挙げながら、国民の寿命の延伸と医療費、介護費の削減という課題の解決にはキュア(治療)よりも予防や健康管理などのケアを中心にした健康づくりが大切だと解説。さらに人間の健康に欠かせない農業と食の重要性について触れ、食料自給率が低い日本の現状を伝え、国の食料、国民の命と健康を守るためにもみどりの食料システム戦略で願われる有機農業の拡大が必要だと語り、生産者を育成するありのまま分校の活動をたたえました。他県の事例として福島県喜多方市の小学生を対象にした総合学習の農業体験を紹介し、食と農を通じた人づくり、まちづくりが日本各地で進められることを願いました。

 

 

「ありのまま分校・オーガニックビレッジの取り組みと今後の課題について」と題してパネルディスカッションが行われ、森山道弘MOA自然農法文化事業団普及員が司会を務め、ありのまま分校に関わるさまざまな立場のパネリストが発表しました。

 

南さつま市農業おこし部の現王園仁志主査は、同分校を軸に進めてきた活動として、市内の高校と協定を結んで行う体験授業、県内外からの農業研修生の受け入れ、同分校卒業生らと連携して立ち上げた自然農法・オーガニック野菜推進委員会による学校給食納入と食育授業の開催、「ありのままお野菜」ブランディングなどさまざまな取り組みを紹介しました。

 

吉田分校長は、1年間を通して自然農法の土づくり、栽培管理、加工、販売などを学ぶ同分校のカリキュラムを紹介し、受講生の実習風景や喜びの声を紹介して「土を育て 野菜を育て 人が育つ」とのスローガン通りに人材が育っていることを伝えました。

 

初年度の卒業生である田原喜代自然農法体験学校応援団副団長は、卒業生が応援団に加入して同分校の野菜づくりや収穫祭をサポートしていると紹介。大仁瑞泉郷(静岡県伊豆の国市)や先進的農家の視察研修を実施したことや、自身も自然農法を実践し、食生活を変える中で花粉症などのアレルギー症状が軽減した実感を語りました。

 

福元雅岳自然農法・オーガニック野菜推進委員会委員長は、同分校で学んで自然農法生産者になると共に、生産者仲間や行政と連携して同委員会を設立。新規就農者の支援、学校給食用野菜の栽培と納入事業、「ありのままお野菜」ブランドの直販サイト運営やグッズ開発などの取り組みを紹介し、仲間たちの笑顔や食べる人の喜びの声がやりがいにつながっていると語りました。

 

 

体験学習の学びを地元高校生が発表。加世田常潤高校の生徒たちは、持続可能な農業は気候変動の抑制や生物多様性の保全に寄与し、人々の健康にもつながるとの受け止めを発表し、栽培実習の他、静岡県伊豆の国市の(公財)農業・環境・健康研究所自然農法大学校や現地の農業高校への訪問、ありのまま分校との交流など1年間にわたる学びを紹介しました。私立希望が丘学園鳳凰高校の生徒たちは、 SDGs の観点から自然農法を環境負荷が少なく安全性が高い持続的な農業と整理して発表。田坂吉史自然農法大学校校長を招いての特別授業、ダイコンやニンジン、キャベツの栽培や収穫などの様子を画像で紹介し、農業実習で土の感触や作物の育ちに感動したことなどを語りました。

 

 

この他、会場では同分校で生産された農産物や、自然農法加工食品を販売。幕間には地元の金峰権現太鼓が勇壮な演奏を披露して、参加者の拍手喝采を受けていました。

 

 

聴講した県内の農政関係者からは「オーガニックビレッジを宣言している自治体のさらなる拡大を願っていますが、南さつま市はモデルとなる取り組みをされていて、MOA自然農法文化事業団との協力関係も先進的なモデルになっていると思いました。特に高校生の体験学習や分校受講生の子どもたちも一緒に農作業をする様子は、農業に触れる機会を増やし、次世代を育てるステップになると思います」との感想が聞かれました。

 

主催/南さつま市、自然農法体験学校 ありのまま分校、自然農法・オーガニック野菜推進委員会、(一社)MOA自然農法文化事業団

 

 

 

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