自らがいけた花の鑑賞に高い癒やし効果
美しい花や景色、美術品を眺めるうちに気分が落ち着き、ストレスが和らぐなど、誰もが美によって癒やされた経験があるのではないでしょうか。特に花を眺めることで、リラックス時に優位に働く副交感神経が活性化されたり、抑うつ、疲労を低下させたりすることが分かってきています。
こうした花がもたらす癒やしについて、鑑賞するだけの場合と、自らがいけてから鑑賞した場合に違いはあるのでしょうか。(一財)MOA健康科学センターの内田誠也主任研究員の研究論文が、学会誌「心身医学(no.7,2020)」に掲載されています。
51人の被験者を対象に、脳にストレスを感じさせる言語想起テストを5分間行った後、ランダムな順序で①気に入った花を一輪選んでいけて5分間鑑賞 (自己花鑑賞実験)、②他人がいけた花を鑑賞 (他人花鑑賞実験)、③癒やしの写真を鑑賞(写真鑑賞実験)の3種類の実験を実施。それぞれの実験後に自律神経機能計測、両肩の筋硬度測定、日芸版「癒し」評価スケールによるアンケートを行ったところ、自己花鑑賞実験が、最も副交感神経が活性化し(図1)、肩の筋硬度も低下し(図2)、アンケートの癒やしの度合いが高くなったそうです(図3)。
「花を鑑賞するだけでも心身を癒すが、それ以上に自らが満足していけた花を鑑賞することが、より効果的であることがわかった」と、内田主任研究員はMOA健康科学センター機関誌「21世紀の健康科学」第61号(2021年春号)で述べています。副交感神経の活性化は免疫力の高まりにもつながることから、新型コロナウイルスをはじめとする感染症の重症化を抑える可能性があるとも。花は家庭でも気軽に取り入れることができます。コロナ禍の生活で生じるストレスを和らげ、健康増進に役立つのではないでしょうか。