ケアとしての医療を考えるシンポジウム

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鹿児島県鹿児島市
ケアとしての医療を考えるシンポジウム

6月9日、鹿児島市内のホテルで「ケアとしての医療を考えるシンポジウム」が開催され、九州各県から250人余りが聴講しました。この催しは日本統合医療学会鹿児島県支部の地域協力団体である「統合医療推進 くすの樹の会」が主催し、同会が事務局を置く南九州療院の開設20周年を記念して行われたもの。心豊かに生活できる社会の実現に向けて、看護や介護のほか世話、配慮、気遣い、支援などさまざまな意味を持つケアの重要性を確認する機会になりました。

 

 

花田茂典くすの樹の会代表の開会あいさつの後、吉田紀子日本統合医療学会鹿児島県支部長がビデオで登場。超高齢化と人口減少社会の中で医療、介護、福祉は厳しい時代を迎えていると述べ、キュア(治療)中心の医療をケア中心に転換し、人間を体や心の面のみならず、社会的、霊的な面も含めて全人的に見つめるケアが、自助、互助、共助、公助と、幅広く行われる社会の実現が求められると語りました。

 

 

自由民主党統合医療推進議員連盟会長の橋本聖子参院議員が「ケアとしての医療を考える」をテーマに講演。高齢化社会では病気予防、健康の維持増進と共に「治す医療」だけではなく、病む人と家族を「支える医療」が求められると指摘。キュアよりも予防や健康管理というケアが中心になるアスリートの体調管理をはじめ、東京五輪でチャレンジした出場選手へのケア、統合医療推進議員連盟の動きなど、ケアを重視した取り組みを紹介しました。医療には本来、科学の側面と共に「癒やしの術」という面があり、日本は美しい自然や精神文化を有するだけに「ケアとしての医療」が持つ共感性や親和性を発揮できると述べ、ケア中心の健康なまちづくり、共生社会実現への意欲を語りました。

 

 

「ケアとしての医療をめざして」と題するシンポジウムが伊藤宗晴くすの樹の会事務局長の司会で行われ、看護、福祉、農業などの分野で活躍する5人のパネリストが、それぞれの立場で取り組むケアについて紹介しました。

 

八田冷子(公社)鹿児島県看護協会会長は、在宅での医療行為を必要とする医療的ケア児について解説。医療的ケア児とその保護者への地域社会の支援は、ケアや医療の在り方を考える機会になり、ケアする側の利他の心を育むと述べ、誰も取り残さない共生社会の実現を願いました。

 

古江尚子鹿児島市会議員は、夫の遺志を継いで議員になり、子育てをしながら市民のための活動に奔走した経験を振り返り、看病や育児に追われる人へのサポートやケアの必要性を痛感したと述懐。心の通うコミュニティーの実現には若い世代との交流や、行政と連携した地域の人たちの健康課題の把握が大事だと述べ、そこに、岡田式健康法による健康づくりや児童作品展を行っているMOAの参加を期待しました。

 

(福)青鳥会障害者支援施設愛光園の森繁広副園長は重度の障害者への支援として、一緒に自然散策しながら生活リズムの形成やケアする人との信頼関係が築かれた事例を紹介。障害のある人がより良く暮らせる社会は、すべての人が暮らしやすい社会だとの思いを披歴し、共生社会の必要性を訴えました。

 

MOA自然農法生産者である福元農園の福元雅岳園長は、南さつま市と(一社)MOA自然農法文化事業団、MOA自然農法加世田普及会が運営する自然農法体験学校「ありのまま分校」で学んで就農。市内の生産者と共に自然農法・オーガニック野菜推進委員会を設立して新規就農者支援、学校給食への野菜納入や食育授業に取り組んだことを紹介。生命力あふれるおいしい野菜が食べる人たちの笑顔と健康につながっていること、すべての生き物が大自然の中で共存しているとの気付きと感謝を語り、自然農法の取り組みの中にあるケアについて紹介しました。

 

ボランティア団体・健康な「人・まち・心」をつくる会の林裕子会長は、(一社)MOAインターナショナルが進める岡田式浄化療法1級資格講座でスピリチュアルケアを学び、自分自身の人生を振り返ってありのままの自分を認めていく中で、自分も他人もかけがえのない大切な存在として見つめられるようになったと述懐。病気に悩む知人にも、体だけでなく心や魂の健康を意識して寄り添い、南九州療院からアドバイスを受けながら継続して浄化療法を行う中で、知人やその家族が改善を実感して浄化療法の施術資格を取得しセルフケアに努めるようになったことなどを振り返り、岡田式健康法によるケアの実際を紹介しました。

 

 

講評を求められた橋本議員と来賓の宮路拓馬衆院議員は、ケアの大切さと共生社会の必要性を考えさせる各発表者の取り組みを賞賛。キュア(治療)だけでなく、体と心、スピリチュアル(霊性)をも見据えて、病気の予防や健康増進を促し、人をより良い生へ導くケアとしての医療の重要性を確認するものとなりました。

 

 

最後に(医)光輪会鹿児島クリニック院長の牧美輝くすの樹の会名誉顧問が謝辞。日本統合医療学会を設立した故渥美和彦医学博士との会話を振り返り、東京大学医学部で人工心臓や医用レーザーなどを研究していた渥美博士が後年、これからの医療には目に見えない霊的な面が重要だと訴えていたことを述懐。物質的な豊かさだけを追求する世界では病気、貧困、戦争は解決できず、健康な社会の実現には、統合医療にスピリチュアルケアの概念が必要だと語りました。

 

参加者からは「橋本先生が取り組んでおられる統合医療の政策化と共に、市民1人1人の健康意識が変わり、地域におけるケアの実践と共生するコミュニティーづくりが必要だと思いました。そのためにも地域で健康づくりに取り組むMOAの皆さんの取り組みが不可欠です」(県会議員)、「さまざまな分野のケアについて学ぶ良い機会になりました。医療は科学的な面が主になっていますが、スピリチュアルなど目に見えない部分を大事にしたケアの大切さを感じました」(市民)などの声が聞かれました。

 

主催/統合医療推進 くすの樹の会事務局

 

 

 

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