(一財)MOA健康科学センター理事長
鈴木 清志
1,岡田式健康法の考え方
岡田茂吉先生の健康観に基づく健康法で、食事法、美術文化法、浄化療法の3つから成ります。詳しくは関連ページをご覧ください。浄化療法の効果を国際的に調査した論文が、統合医療では世界的に権威のある医学雑誌(Journal of Alternative and Complementary Medicine)の2020年8月号に掲載されましたが、その中で説明した岡田先生の健康観と病因論を翻訳すると、次のようになります。
「全ての物質や生物は、現界の『肉体』と霊界に属する『霊体』が表裏一体の関係にあって、相互に作用している。体内で代謝された物質や老廃物は毒素となって、それが肉体的にはさまざまな病気や不幸の原因となり、霊体にとっては『くもり』となる。一方、悪い行いや考え方は霊体のくもりとなり、肉体にとっては毒素となる。体内の毒素の除去、すなわち霊のくもりの除去は、あらゆる種類の病気の根本的な解決と真の幸福につながる。」
岡田式健康法を実践し、体内の毒素、つまり霊のくもりを取り除くことで、あらゆる種類の病気の根本的な解決と真の幸福を目指します。統合医療の分野では、こうしたスピリチュアルな面も、私たちの健康を保つ上で重要だと考えます。
2,岡田式健康法を研究することの意味
岡田式健康法はスピリチュアルな面を含めた健康を目指すとしても、なぜ食事と芸術とエネルギー療法を柱とするのでしょうか。岡田式食事法は無肥料無農薬の米と野菜を中心としますが、自然農法は安全だとしても、一般的な有機農業と何が違うのでしょうか? 他の食事法よりも健康に良いのでしょうか? 芸術について言えば、自分で花をいけるのと人がいけた花を見るのとでは、どう違うのでしょうか。エネルギー療法の一種である浄化療法は、もっと難しいですよね。手のひらから出るエネルギーがあなたの症状を改善すると言われて、最初から信じる人は少ないと思います。
健康法を始めた動機を調査した論文によれば、科学的な裏付けがあることよりも、自分が信頼する人から勧められると、試す気になるようです。ですから、岡田式健康法の科学的な研究結果があるからといって納得してもらえるとは思いません。それでも、研究には大きな意義があります。
3,研究によって「ここまでは分かった」と言える
私を含めて(一財)MOA健康科学センターの研究員たちは、それぞれが得意とする方法を用いて岡田式健康法を研究しています。そしてその成果を国内外の学会で発表し、日本語や英語の論文にまとめています。
岡田先生は、ご自身の信念と経験を基に健康法の効果を述べており、その客観的な裏付けを示すのが私たちの仕事です。岡田先生の文章や他人の経験がいかに素晴らしくても「あなたにも同じ効果がある」とは言えません。西洋医学が優れているのは「こうやれば、何割の人がこうなる」と言える点です。今から治療を受ける人にすれば、病気が良くなる可能性がどの程度なのかは大問題です。岡田式健康法を科学すれば「こうすれば、このくらいの確率でこうなる」とか「ここまでは言えるけど、それ以上はまだ分からない」と言えるようになります。
国際学会で岡田式健康法の研究結果を発表すると、その反響の大きさに驚かされます。いろいろな国の人から質問を受けるだけでなく、今度私の国で講演してほしいと頼まれることもあります。なぜだと思いますか?
多くの研究は、大学や公立の研究機関で、まずは数十人を対象に、特別な検査機器を用いてデータを詳しく分析します。その結果が良いと、国などから研究費の助成をいただいて、大規模な調査を行います。MOAのような民間組織が、単独で大規模調査を行った研究はほとんどありません。なぜなら、一般的には大規模調査を行うネットワークを構築することが難しいし、費用がとても掛かるからです。ちなみに、MOA会員の方々にご協力いただいて行った岡田式健康法の調査は、国内では延べ9万人が参加し、14カ国で行った国際調査には1万3千人が参加しました。こんな大規模な国際研究ができるMOAは、いったいどういう組織なのかと興味を持つわけです。
こうした研究ができた背景には、1浄化療法療法士の皆さんがボランティアでご協力くださったこと、2インストラクターの皆さんが、国内外で何度も調査の説明会を開いてくれたこと、3調査の質問を簡単にしたこと─などがあります。この大規模調査の結果については、あらためてご紹介します。医療関係者や有識者の方たちは、MOAが岡田式健康法の効果を真面目に研究していることを評価してくださいます。結局、MOAが信用されるためには、MOA会員の思いやりの心と行動、岡田式健康法の実際の効果、そしてその効果に関する科学的な研究結果の3つが大切だと思うのです。
4,他人の経験は意味があるのか
既に述べたように、他人の経験だけを基に「あなたはこうなる」とは言えません。人はそれぞれ違うからです。でも「奇跡だ!」と思うような経験は、症例報告と呼ばれるもので、それが何度も起きれば、科学的な裏付けは乏しくても意味があります。岡田式健康法に限らず、どんな健康法でも療法でも、そうした「奇跡」の話を聞く時に、心掛けるべきことがあります。がんを例に取れば、専門家が間違いなくがんだと診断した場合でも、1万人に1人は自然に治るといわれています。また、症状や検査データが一時的に良くなることは珍しくありません。ですから、たとえ治ったとしても健康法の効果だとは断定できないし、ましてや一時的な改善を健康法による効果だと考えると、症状が再び悪化した時に「何が悪いんだろう」と悩むことになります。今後の生活をどう送るかが重要であり、症状の一時的な良しあしにとらわれず、生活習慣の改善に努め、必要な治療があればそれを受けつつ、医学的にきちんと経過を見てもらうことが大切です。その上で、その健康法が自分に合うと思うのなら、楽しみながら継続してください。結果が良いことが多いと思います。
【プロフィール】
すずき きよし
1981年千葉大学医学部卒。医学博士。榊原記念病院小児科副部長、成城診療所勤務、(医)玉川会MOA高輪クリニック・東京療院療院長などを経て、(一財)MOA健康科学センター理事長、東京療院名誉院長。(一社)日本統合医療学会理事・国際委員会委員長。94年日本小児循環器学会よりYoung Investigator’s Awardを授与された。