大阪府 O・Mさん(66歳、男性)
〔業績が認められ親会社の部課長にセミナーをすることが決まる〕
私の勤務する会社は、ある大手電気メーカーの下請けで、従業員30名ほどの会社です。7年位前から、朝礼で感謝の大切さなど、岡田先生の本に書いてあることを少しずつ伝えてきましたが、ここ2~3年前から、そのことが社内に浸透してきました。
平成21年2月18日に、親会社の方から「貴社は、他社の製品よりも綺麗に、早くできるのはなぜか、その心構えを他社に話してほしい」と言われました。
19日に下請け会社20社が集まった場で、私は若いころから岡田茂吉先生の考え方を学び実行してきたこと、この仕事の無い時代に、親会社から仕事をいただいていることに社員全員が感謝して仕事をしていることをお伝えしました。
具体的には、わが社に何をやらせてもできないと思っていた従業員がいたが、何がやりたいのか本音の話を聞いて、やりたいことをやらせるようになってメキメキと腕を上げたこと。始終遅刻(8時30分始業)してくる若い従業員が、ある日10時に出社して叱られるものと思い込んでいた時、「よくきてくれたな、お前の年ごろの俺ならきっと休んでいるよ」と、本人にやさしく声をかけた翌日から、勤務態度が一変し、今では仕事もバリバリやれるようになった例などをお話ししました。
従業員がミスした場合に、体調不良なのか、悩みがあるのか、いずれにしても不安な心の状態が結果となって出てきているのだから、叱るよりも、まずよく聞いてあげる。従業員の一人ひとりと会社とはお互いに必要あって繋がっているので、必要ない人間はいない、できない従業員はいない、褒めてあげる、認めてあげることで人は育つと、日ごろから会社で取り組んでいることをお伝えしました。
平成20年度(20年4月~21年3月期)のわが社の業績が親会社に認められて、数百社の下請け会社がある中で、初めて貢献度№1に選ばれました。4月に所長が感謝状と金一封を持って来られた時に、「どのような社員教育をしているのか、弊社の部課長にも話していただきたい」と依頼されました。
5月15日にセミナーとしてお話させていただくことになり、どうしようか思案していましたが、前日になって“場を和らげるために、話の前にお花をやってみたらどうだろうか”と頭に浮かびました。私は、平成20年11月より月1回光輪花クラブというお花の教室で妻の妹から習っています。この時はまだ半年ぐらいしか経っておらず、自信はありませんでしたが、光輪花クラブで学んでいる通り、花がどういけてもらいたいかを考えながら、一本一本の花の良いところを発見しながらいけ、その花を妹に見てもらい、アドバイスを受けました。
〔部課長を前にお花をいけて懇談する〕
当日、部課長クラス28名を前に、お花をいけました。そのお花をみて、どう感じられたか、それぞれ感想を述べていただきました。お花のきれいな部分を一輪一輪から感じる方、何も感じない方、いけている姿に感動したと言ってくださった方など、様々な感想を述べてくださいました。
心が和んだところで、輪になって、みなさんからのご質問に答えていくことにしました。社員とのこと、奥さんや子どものこと、自分の体調の不安などの話が出ました。私は、若いころから岡田先生の本に書いてあることを実行し、今の生活があること。社員との関係では、考えを白紙にして相手の思いをよく聞くことから全てが始まる、ともすると悪いところに目がいきがちだが、良いところを見つけて褒めてあげる、認めてあげるという日ごろの取り組みを報告させていただきました。そして岡田先生は、私たちの周囲で起こっていることは、自分の写し鏡であり、自分が変わらなければ相手は変わらないこと。また、病気は体内にあってはならない毒素が、生理的に自然排泄する浄化作用であり、病気は苦しいけれど、それで健康を取り戻すことができると言われているなどを、お伝えしました。その後、個人的な相談もお受けしました。
後日、参加されたみなさんから次々電話がありました。「今までこのような考え方に出合ったことがなかった。50数年間、いったい私は何をして来たのかと思うと、身ぶるいするほど反省しました」。また、障がいのある子を持った方から、「子どもに対しても、妻に対しても考え方が変わりました。一生この子に付き合って行くことで自分自身も成長するのだと分かり、不安が取れました」など、お礼の言葉をいただき、大変嬉しく思いました。
〔親会社の社員にセミナーを行う〕
6月3日、親会社の総務部長が、今度は「200名近くいる事務職の社員に、セミナーをしてほしい」と言ってこられました。たくさんの方にお伝えするのにはどうすればいいかと思案して、事前にアンケートを取って、悩みを聞いてみようと思い立ちました。
アンケートには、子どもの不良化や躾、教育の悩み、障がいのある子どもがいる、自分や妻の病気、家の中で対話がない、夫婦で意見が合わない、妻が浮気しているようだ、会社の同僚と意見が合わない、自分の意志をはっきりと伝えることができない、引っ込み思案だ、あまり感動がない、退職後の不安など、それぞれが抱える悩みが寄せられました。
当日は、普段会社で着ている作業着で臨み、最初にお花をいけました。その後の話では、会社や家庭での自分の取り組みや体験とともに、どんなものにも霊線*1があり、夫婦の霊線が一番太いこと、一例として、子どもの不良化では、親子も霊線でつながっており、幹である親のあり方を正すことが大切とされた岡田先生の言葉などをお伝えしました。そして、「相手を想い自分にできることを実行してみましょう。よろしければ、お花に想いを込めて一輪挿しをいけてみませんか」と、提案させていただきました。
私はアンケートを読ませていただいて、深刻な悩みを訴えておられる、みなさんの気持ちを受け止めることだと思いました。何かを変えていかなくてはいけないという切実な思いを持っておられるし、模索しておられる。それを変えるために行動を起こす、そのきっかけになればと、お花の一輪挿しを提案してみました。私自身がそうであるように、花は誰でもいけることができますし、家庭で花をいけることは、家族間に新たな話題を提供することになり、会話にも繋がっていくことを、日ごろの光輪花クラブで感じていたからです。
参加者から「今までたくさんのお花を見てきたが、こんなに心が躍り、ワクワクするようなお花を初めて見た」「今までいろいろな偉い人の話を聞いてきたけれど、心に響かなかった。今日は自分もやってみようという気持ちになった」「Oさんができるのだから、自分もできるような気がしてきた」などの声をいただきました。
*1 万物をつなぐ、空気よりも希薄な目に見えない霊的な線で、人と人をつなぐばかりではなく、宇宙の天体どうし、天体と人、人と祖先、人と物をつなぐ。岡田先生は「縁の糸」とか、「縁が結ばれる」ということは「霊線」のことであろうと述べている。
〔社員のみなさんの反響〕
3日後、係長からお礼の電話をいただき、家で花をいけて喜ばれた方、朝の挨拶を始めて家族がびっくりしたという方、父の日に「おやじありがとう」という手紙を送って喜ばれた方などがあったと報告されました。また、ある方は、夕食の時、「おいしいなあ」と言ったら、奥さんから「今日どうしたん?」と言われたそうです。翌日、「家で食べると一番うまいわー」と言うと、「あんた大丈夫?」と言われ、3日目に「今晩おかず何や、このごろ楽しみでなぁ」と言ったところ、奥さんが「うちの主人、このごろおかしいねん」と同じ社宅の奥さんに話すと、「うちのもおかしいねん」と話し合ったということを伺いました。家の中で話をしたことのない人だったとのことでした。
1週間ほど経ってから、花の一輪挿しを続けていた人から電話があり、「奥さんから『気持ち悪いからやめて』と言われました。そこへ小学4年生の娘が来て、『お父さん、お花やめんといて』と言ったので、なぜかと聞くと、『お父さんが花をいけるようになってから、お母さんとの口げんかがなくなったから、その方が嬉しいもん』と言ってくれました。確かに、今迄ガミガミと言っていたが、言わなくなっていました」とお礼を言われました。
数ヶ月経って、総務部長からの電話で、参加者のその後の状況について伺わせていただきました。参加者のご家族に、高校生の不良少年がいて、物も言わないような状況下で、お父さんがお花をいけたら、壁に花瓶を投げたと。また花瓶を買ってきていけたら、バーンと払ったと。また買ってきていけたところ何もしなくなり、花をいけ続けるうちに、挨拶をしたら「うん」と返事をするようになった。そうするうちに、「お母さん、お弁当作ってくれる?」と言ってくれた。お母さんは嬉しくて泣きながらお弁当を作ったそうです。「子どもが初めてまともにものを言ってくれた」と泣きながらの電話が、部長にかかってきたとのことです。
後日、ご本人からも電話がありました。私は、お花をいけ続けてくださったことが嬉しく、「よくお花を続けられましたね」と申し上げたら、その都度奥さんが花瓶を買ってこられたそうで、「妻の協力があってのことです。自分一人だとやめていたでしょう」とおっしゃっていました。
〔一輪挿しのサークルを行う〕
8月28日、親会社の総務第一課52名に、お花の一輪挿しのサークルを行わせていただくことになりました。MOA美術館の創立者である岡田先生は、自然とふれあい、さまざまな美を楽しむ生活を自ら送るだけでなく、広く社会にその必要性を訴え、実践をされてきたこと。優れた芸術にふれることで、人は心身を清らかにし、精神性が高められること。花にもその働きがあることなどをお話しさせていただき、一輪のお花をいけていただきました。
いけた花を一つ一つ丁寧に見させていただきました。みなさん普通にいけておられるのですが、横を向いている花、下を向いている花、上を向いている花、真正面を向いている花、淋しそうな花、明るく楽しそうな花、幸せそうな花、そういうことが私の心の中にフッと浮かびました。
後から、お一人お一人に来ていただいて、「もし間違っていたらごめんなさい」と断ってから、それぞれの花から感じたことを申し上げたところ、上司に不満をもっていることや、いつも我慢しているということ、逆に、今とても幸せだということなど、みんなが心を開いて素直に答えてくださいました。そのことを総務部長に報告すると、一言「申し訳ない」とおっしゃいました。
その後、部長はみなさんの前で、「5月以来、私もずっと一輪挿しをいけているが、家庭内がガラリと変わった。実はわが家には目の見えない娘がいて毎日地獄のような家庭だったが、花をいけだしてから家庭が明るくなった。みなさん、お花を通して明るい家庭を築いていただきたい」と、話されました。
部長は、全盲の娘さんを抱えて、前途に不安を感じておられたそうですが、家庭で、こういう花でと声を出しながら娘さんの前でいけていると、「お父さんがいけた花が綺麗」と言われた瞬間に、娘さんのやさしい心にふれることで、“今まで自分はどれだけ癒されてきたか”と、“家族はお互いを支え、また支えられている”と気づかされたそうです。娘さんと一緒に生きていくことに前向きになられ、その後、別の子会社でセミナーをした時にも、「お花をいけてから、私の家は天国になった」と、みんなの前で話されました。
部長は、「自分は会社では叱ることばかりしていた」と反省され、失敗するには何か悩みがあるはず、先ず聞くことが大切であるという考えに変わり、社員にも声をかけられるようになって、セミナーの折にも、家庭で花をいけることを積極的に勧めてくださいます。
その後、部長から、「お花に参加した52名中、37名がお花を継続している。腹の立つことがあっても、お花を見ると気持ちが落ち着き、人に対する批判もなくなり、人の見方が変わり、職場内の雰囲気が変わりました」と、喜んで電話がかかってきました。
また、平成22年1月に、総務第2課の方々にお花のサークルを行った時、参加者の中に茶髪でピアスをした40歳前後の社員がおられて、「なんで花やねん」と大きな声で叫ぶということがありました。平常心を失わないように自分に言い聞かせて、お花をいけることの願いを伝え、花をいけてもらったところ、その方が、いけた花をじっと眺めながら涙を流して、「お花ってこんなに優しい気持ちになれるんですね」と言われ、驚きました。
次の日、みんなに挨拶をするようになったと部長から聞かせていただきました。その後、髪を黒くし、会社での態度も変わって、職場の班長になったと伺い、私も驚きました。
〔花を通して幸せになってもらいたい〕
毎回の花のセミナーでは、MOAを分かりやすく紹介したリーフレットを使用して、花を通して幸せになってもらいたいということをお伝えする中、みなさん家庭で花をいけられるようになり、人や家庭が変わっていく姿に接して、私自身人に尽くすということの充実感と幸せを実感しています。
仕事の面でも、所長から直接電話があり、「5年くらいかかる大きなプロジェクトに、貴社もぜひ入ってほしい」と言われ、5年間仕事が保障された上に、このたび、所長が、東京本社に栄転になられ、「今度は是非東京にも来てください」と言っていただき、本当に感謝しかありません。