学校を支える地域のボランティア活動

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神奈川県  Y・Hさん(59歳、女性)

〔子どもたちへ花の活動が広がる〕

 平成4年に長女が小学校に入学したことをきっかけに、私は小学生を対象に「子ども山月」という花の活動を始めました。
 お友だちや知り合いの方にお話しすると、あっという間に20人の申し込みがありました。折しも、学校の月1回の週5日制が始まっていたこともあって、参加者は増え、最も多いときには100人余りとなりました。会場も町内4ヶ所に分散して行うほどでした。
 参加した子どもたちからは、「お花をいけるだけでなく、季節に合った花器を作ることも楽しい。家の玄関に飾っておくと、みんなからきれいとか、すてきだねとか言われてうれしい」「お花をいけるとお花畑にいるようです。お花とお話ができて、お花の心が分かってきます。私がいけると、お花がニッコリと笑ってくれる気がします」などの反響がありました。
 お世話係は当初数人で、てんてこ舞いしていましたが、参加するお母さんの中からお手伝いをしてくれる方が徐々に現れてきました。

〔ボランティアグループ「花の和」の結成〕

 「子ども山月」を始めて1年が経ったころ、私たちは、町の人々にも子どもたちの作品を見てもらいたいと思い、町主催の「子ども文化祭」への参加を申し込みました。
 子ども文化祭で展示した作品は、町の人々から大きな反響をいただきました。「子どもがこんなに美しく花をいけられるのか」「牛乳パックやペットボトルを利用して、こんな良い花器ができるのか」などという驚きの声も寄せられました。
 この文化祭の準備を進める中、役場より、町のボランティア団体としての登録を勧められました。そこで、「子ども山月」を進めてきた私たちのグループと、別の学区を中心に花の活動をされていたMOA美術文化財団(現:岡田茂吉美術文化財団)インストラクターとを合わせた15人のメンバーで、「花の和」というグループを結成し、町に登録しました。平成5年のことでした。
 子ども山月を通して、花で人の心が変わることを実感していた私たちは、子どもたちの健全な育成を願う気持ちから、学校へのいけ込みを継続してきました。現在は、21人に増えた仲間と助け合いながら、毎週一回、小学校3校、中学校2校に花を届けています。
 子ども山月やいけこみの継続が評価されたのでしょうか、「花の和」の活動には、教育委員会からの後援がいただけるようになるとともに、町から補助金もいただけるようになりました。

〔教育問題の解決を願った花の活動〕

  平成14年に入って、N小学校とN中学校の校長先生から、「花の和」との懇談の場を持ちたいというお話が相前後してあり、グループのメンバー数人で出かけました。
 N小学校との懇談では、校長先生から、「この学校にきて何より感動したのは、学校に花が飾られ、それが地域のグループによって長い間継続されていることです。飾られた花の前には『花ノート』が置かれていて、児童、保護者、来校者、そして学校職員がノートを通して交流できるということも素晴らしいと思います。花と、それをいけていただく姿を6年間見続けることは、子どもたちの将来に計り知れない影響を与えるでしょう。この活動を広く知ってもらうことが私の仕事だと思います」との言葉をいただきました。
 また、翌日に開かれたN中学校との懇談では、「以前は生徒が荒れて、大きな問題となっていました。それが、花をいけていただくようになってから、校内もきれいに掃除されるようになり、生徒も落ち着いてきています。もっと多くの場所にいけていただけるよう、今、学校として予算措置を講じているところです」と言っていただきました。
 先生方の言葉を通して私たちは、子どもたちが変わり、学校の雰囲気までも変わっていくことを確認できて、やりがいと感謝の思いを新たにすることができました。
 さらに8月末には、「学校を支える地域のボランティア活動」というテーマで、N小学校とN中学校の職員組合主催の教育懇談会が開かれ、ほかの2団体とともに「花の和」にも出席の要請がありました。
 各団体から、活動を始めた動機や問題点、今後の抱負などが報告されました。私は仲間を代表して、健康で豊かな町づくりを願って子どもの花の活動を続けてきたこと、そこから、現代の教育現場で起きているさまざまな問題の解決に少しでもお役に立てればと、いけばなのボランティアを始めるようになったことをお話ししました。
 そして、私たちの活動の原点は、美によって社会人心を潤し、物心ともに豊かな新しい文明の創造を目指した、MOA美術文化財団創立者・岡田茂吉先生の思想にあることを紹介しました。先生方も、共感を持って耳を傾けてくださいました。
 その後、校長先生から、「生徒は美しいものを美しいと感ずる心が着実に育っていると思います。花器の周りは四季の色を醸(かも)し出し、見る人の心を和ませる。花そのものの美しさ、その美しさを伝えようとする人の心の美しさがあります」との言葉をいただき、私たちの大きな励みになっています。
 10月に、N小学校から、2年生の生活科の公開授業、ならびに全学年対象のいけばな体験への協力をお願いされました。以降、毎年一回、ふれあい授業として、低学年の部、高学年の部に分かれて、いけばなの体験を行ってきました。
 当日は、花にも人と同じように命があり、心があるということを中心にお話をしています。小学校1年生から6年生まで、見方、感じ方、表現の仕方は様々ですが、初めての「花との対話」を人生の大切な一コマとして心に刻んでくれたように思います。
 私たちは、一人ひとりのまなざし、笑顔、発言やしぐさなどを通して、この子どもたちと同じ時を生きている喜びや責任の重さをかみしめています。
 これからも、多くの子どもたちの笑顔を励みに、この「花の和」の活動を進めてまいりたいと思います。

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