山形県 T・Sさん(40歳、女性)
〔保育園からの依頼〕
平成21年8月、子どもが通う保育園から、11月の親子行事のアイデアを募集するアンケートが届きました。武者小路千家の教授の資格を持っている私は、「お茶会をさせていただきたい」と書きました。結局、11月の親子行事は「親子体操」になり、少し残念に思っていたのですが、12月に園長先生から「2月か3月に『卒園、進級おめでとう茶会』をしてもらえないか」と声をかけていただき、ただただ驚くばかりでした。すぐにMOA美術文化財団(現:岡田茂吉美術文化財団)のインストラクターの先輩で何かとお世話になっているSさんに相談すると、「協力しますよ」とおっしゃっていただいたので、お受けさせていただくことにしました。
翌年の1月、保育園のお茶会は2月19日に決定しました。お茶会は園児約70人のうち、卒園する年長児18人にお抹茶を、お菓子は全員にというお話でした。準備期間が1ヶ月ほどしかなく、Sさんと話をさせていただく中で、Sさんが活動しているMOA健康生活ネットワークと一緒にさせていただくことになりました。ネットワークから5人、そして米沢の実家の母と私と7人の体制になり、準備もスムーズに進みました。
特にSさんにはいろいろと心遣いをいただきました。私がお茶菓子を買う時、かわいいゼリーのお菓子が目に止まり、お干菓子と一緒に買おうとすると「ゼリーには香料が含まれているし、年少の乳児には食べづらいのでは?」と気にかけてくださったり、前日の保育園との打ち合わせをした時、園長先生が「お茶やお湯が間に合えば年少児までお茶をいただきたい」と急遽予定を変更されたので、どうしようかと不安になっている私に「とにかくできることはさせていただくから、今日はゆっくり体を休めて明日に臨もう」と安心させてくださりました。
〔園児、保護者、先生から好評を得る〕
2月19日は夫の弟の命日でもあり、私は義母が準備してくれた朝ごはんを仏前にお供えして“ご先祖様、一緒に奉仕させていただきましょう”と手を合わせて、家を出ました。お茶会の1週間前から熱を出し、参加が心配された息子は、すっかり熱が下がって、お茶会のためだけに参加しました。
会場となったフロアにはお雛さまが飾られていました。そこに、母がもってきたお花で茶花をいけ、MOAのスタッフのMさんが持ってきてくださった赤い毛氈(もうせん)を敷くと華やかなお茶席会場となりました。ランチルームを水屋として貸していただいた私たちは7名で円陣を組み「心を込めてさせていただこう」と確認し合って臨みました。
まず、年長の園児が赤い毛氈の上に6人、キチンと正座し、お茶席が始まりました。そして6、7人ずつ10数回の入れ替わりをして、すべてが1時間半で終わるというスムーズさでした。抹茶もお湯も余裕があったことから園児全員にお抹茶を出すこともできました。
園児の座る姿がとてもかわいらしかったです。ある園児はお干菓子を食べると「おいしい」と小声で言い、抹茶もきれいに飲んでくれました。Sさんに指摘されたゼリーを使わないで、お茶菓子にお干菓子を使って良かったと思えた瞬間でした。
無事終えると、園長先生からは「貴重な体験をありがとうございます。子どもたちが大きくなった時思い出してもらえるようなお茶会だったと思います」と言われて、一緒に喜んでくださいました。
その後、Sさんのお宅で着替えと、ミーティングをかねてお茶をごちそうになり、お一人お一人から感想も伺いました。Mさんは初めてお茶会のお手伝いをされたそうで、お茶碗にお湯をそそぐ時は“おいしく召し上がってもらえますように”と一杯一杯心を込めてそそがれたと話されました。「7人で70人近くのお抹茶をお出ししたのに、全然バタバタせず、落ち着いてでき、奇跡だね」と言ってくださる方もいました。
後日、園長先生から、園児たちはお茶会をしたフロアで真似をして座ったりしているというお話を聞き、微笑ましくなりました。また、その園児たちが家に帰って家族にお茶会のことを話したらしく、保護者の方からいただいた感想文も届きました。
「以前、親戚の家では苦くて飲めないと言っていたのが、『保育園で飲んだお茶はおいしい』と言っていました」「とても良い企画ですね。子どもは苦くなくておいしいと言っていました」「私もお茶会を見てみたかったのですが残念。子どもは良い経験ができたと思います」「家に帰ってお茶の飲み方を教えてくれました。とてもおいしかったと言っていました」「次回は是非保護者同伴でやってほしい」「家では体験できないこと。たまには緊張も良いですね」などなど、とても嬉しい感想文でした。
今回のお茶会はSさんをはじめ健康生活ネットワークのみなさんが心を尽くしてくれたお蔭で、みなさんの力なくしては絶対できなかったことだと思います。そして園児たちがこれほど気持ちよく、楽しくお抹茶をいただけたのは、みなさんの想いが園児や先生に伝わったからではないかと思っています。
〔いけばなのいけこみが評価される〕
私は子どもが入園して1~2ヶ月ほど経ってから手作り花器を作り、保育園の玄関の横にいけばなを飾るボランティアを始めましたが、子どもが卒園した今も続けています。
花器は、空き缶やペットボトルを再利用します。画用紙や和紙などを巻き付けた後、園児たちにも分かりやすいように、カニや金魚などの生き物の型紙を作り、貼り付けて完成です。毎週末、新たな花器を作って、花材を取り替える月曜日の出勤前の時間に保育園へ持っていきます。そして、交換した花器はお下がりになってしまうのですが、会社の玄関の入り口に飾ったり、ママ友だちにプレゼントしたりしています。
6月14日に嬉しいことがありました。それは、私がいつものように新たな手作り花器を持って保育園に伺ったところ、先生から呼び止められました。そして「園長先生から渡してほしいと言われて・・」と大きな箱を差し出されました。中には洗剤1ケース(8個入り)が入っていて、「私はこういうのをいただくためにやっている訳ではないので」とお断りすると、「それは分かっているので」と再び箱を差し出されました。あらためて中を見ると、洗剤のほかにアルバムが入っていました。中を開くと、この1年間に私がいけこみをさせていただいた手作り花器の写真集でした。園長先生が1年間撮りためておられたそうです。
あとで園長先生に電話をすると「息子さんが卒園した春にでもお渡ししたかったのですが、今ごろになってすみません。玄関の手の消毒のすぐそばにお花があるので親も子もみんな足を止めて見られるのです。『誰がいけているの?』と聞かれて『卒園した園児のお母さんだよ』と答えています。子どもたちは花器やお花に触りたくてしょうがないのです。季節の花や花器を見させていただいて外からのお客様も喜んで見てくださるんです」と園の様子をお聞きしました。
6年間いけこみを続けてきましたが、このようなプレゼントは初めてでした。時々、ママ友だちから「可愛い花器は携帯のカメラで撮っているの」と聞いて、私も真似して記録しておかなきゃと思っていたのですが、思いがけず園長先生からこのような写真集をいただけて、私は感謝と喜びで本当に涙が止まりませんでした。
また7月7日に、会社でボーナス期に合わせた臨時集会が開かれたのですが、集会の前に課長に呼ばれて「Tさんは今日、表彰されるから」と言われて驚きました。私が「何の表彰をされるんですか?」と聞くと「お花をいつも頑張っていけてくれているから」とのことでした。表彰式では、特別賞として2人が表彰されたほかに、私がオリジナル花器に四季折々の花をいけて、職員を和ませてくれたということで「スマイル賞」という表彰状とギフトカードをいただきました。
表彰式の少し前には、女性の課長がいきなり、「みんな気づかないのに、いつもお花をいけ続けてくれてありがとう」とも言われました。私は“そんな風に思ってくれている人がいたんだ”と思うとともに、美術文化インストラクターとしてこのように評価されることに、ますます頑張ろうという気持ちと張り合いを感じています。