東京都 S・Cさん(71歳、女性)
〔学校でお花のいけこみを始める〕
私は、平成10年に60歳になった時に、地域のために何かお役に立つことをしたいと思いましたが、地域の方々との繋がりも少なく、そうこう迷っているうちに3年があっという間に過ぎていきました。
そのころ、杉並区の「区報」を読むようにしておりましたが、ある時、「地域の方々がもっと学校に関わって欲しい」という、地域のI小学校長のコラムが載っておりました。
私は「お花を通してお役に立ちたい」と、校長先生宛に手紙を書き、春休み中にポストに投函し、9月には学校を訪ねて、校長先生と教頭先生にお花やお茶の活動を紹介しているパンフレットをお渡しして、「何かお手伝いできることがあればお返事ください」とお伝えしました。
3日後に校長先生から電話があり、「よろしければ学校にお花をいけてもらえますか」とお願いされました。お花を持って学校に行くと、先生が10ヶ所ほどのいけこみ場所を教えてくださいました。それから8年にわたって、校長室、教頭の机の上、玄関、保健室、廊下などにいけこみをしています。花器は牛乳パック、空き缶や、ペットボトルなどを利用し、花は一輪の花と葉を組み合わせていけています。
〔地域の方と花壇づくりを進める〕
いけこみを始めて半年が過ぎたころ、校庭の3分の2を芝生にすると伺いました。私は、思い切って校長先生に芝生とともに近所の方々と楽しめる花壇を作っていただけないか、お願いしてみると、「いいことですね」と言われて、検討してくださることになりました。
翌平成14年4月のことでした。学校に行くと、校長先生が「花壇ができています。見ていらっしゃい」と笑顔で言われ、校門のすぐ内側に丁度よい広さの三角形の花壇がありました。
早速、近くのお友だち3人と一緒に、黒土を何度もふるいにかけて日に干し、それを深さ60㎝の花壇の中に入れ、仕上げに有機堆肥を混ぜるという作業を約1ヶ月かけて行いました。そして、学校公開日に合わせて校長先生や保護者の希望者とともに花の苗を植え、校長先生が募集された若いお母さん方と当番制で水やりや花がら摘みを行いました。
〔子ども教室でのふれあい〕
平成16年の新年度より、新たな校長が赴任されました。3月31日、毎年のようにお花を持って校長室へ行くと、校長先生が満面の笑みで迎えてくださり、「私はMOAに大変お世話になりました」と言われました。お聞きしますと、前任地で教頭時代、MOA美術文化インストラクターの方に大変よくしていただいたとのことでした。
この年から、働くお母さん方に代わって放課後のひとときを子どもたちと一緒に過ごす地域子ども教室に関わるようになりました。平成16年は、月に1度お花を楽しむ場を設け、翌年からはお茶の体験が加わり、その翌年にはクッキングも加わり、現在に至っています。
お花は、「いのちの存在」をテーマにし、お茶は日本文化としての茶の湯の世界について伝え、クッキングは作って食べるだけではなく、食材の話を通して生命の尊さと感謝の心を伝えるようにしています。
私一人では何一つできませんが、健康生活ネットワークの方々の協力の中で、子どもたちのために精一杯やらせていただいています。
〔練馬のMOA美術館児童作品展に作品を出展〕
平成20年にMOA美術館練馬児童作品展についてネットワークで話題になり、「I小学校からも作品を出展してもらえるよう、校長先生に聞いてみたら」という意見がありました。私は5月19日に学校を訪ね、校長先生に相談してみました。校長先生は、「前の学校でもやっていました。募集要項はありますか」と聞かれ、こちらが慌ててしまいました。すぐに児童作品展の事務局に連絡して資料を送っていただくと、「お返事はいつまでですか」と聞かれ、事務局に確認して「6月末です」とお伝えしました。
6月末、校長先生にお会いすると少し暗い表情に見えたので“駄目だったのだな”と思いつつお話を伺おうとすると、校長先生の方から「図工の先生から時期が遅すぎて今からでは間に合いませんと言われました。しかし、私がやります」と力強く言われました。私は胸が熱くなり、思わず、校長先生と握手しました。
「夏休み中に1~2年生を中心にやります」と言われ、私も夏休み中はいけこみを休むのですが、この年は毎週行きました。
8月31日、I小学校でいけこみをしていると図工の先生とお会いました。先生は開口一番「MOA美術館はいつもいい企画を次々となさっていますね。いつか子どもたちを連れていきたい」と言われ、私はビックリしました。そのお陰で、21年度の出展について話し合いができました。
9月3日、学校を訪ね、お魚をテーマにした25点の絵を預かり、練馬の児童作品展に出展させていただきました。10月には私たちも児童作品展のお手伝いに行き、みなさんと楽しく展示などを行いました。
〔私たちの区で児童作品展の開催へ〕
このころ、校長先生から「スクールサポート協議会」の立ち上げについてのパンフレットをいただき、参加させていただくことになりました。参加者は小学校と関わったボランティア活動をされている方々ばかりでした。2回目の会合の時、Tさんという若い男性が、1回目に続いてまた「私はもっと地域に深く関わりたい」と言われましたので、私はこの方が児童作品展に力を貸してくださるといいなと思いました。
私たちは平成21年から杉並区で児童作品展を開催したいと願っていましたので、作品展の実行委員としてTさんの協力をいただけないか、校長先生に相談してみました。校長先生は、「私から話しておきましょう」と言ってくださいました。
平成21年3月21日、Tさん宅を訪問し、実行委員として児童作品展に力を貸してほしいことを伝えると、快く承諾してくださいました。4月11日に、ネットワークの方々と一緒に、Tさん夫妻を誘ってMOA美術館に行き、児童作品展について説明することができました。
3月に行われた東京都のMOA議員連盟の総会で、H都議と久しぶりにお会いしました。都議から「あなたの区では児童作品展はしないのですか」と打診されました。4月27日に、今年から始める児童作品展の後援申請に行きましたが、H都議が事前に話を進めてくださっていたお陰で、区と教育委員会の後援と賞の授与の承諾をいただくことができました。
作品展の会場は健康生活ネットワークのYさんの紹介で、区の複合施設という相応しい会場が見つかり、11月の開催が決定しました。審査員も2人の先生が引き受けてくださり、9校から203点の出展作品を審査していただきました。
Tさんは、児童作品展の細々とした資料づくりを全て引き受けて、パソコンで書面にしたり、展示のレイアウトも責任をもって作ってくださいました。Oさんは事務上の手続き、会場や控室の予約、経理を担ってくださいました。
〔杉並児童作品展〕
11月21日朝からMOA美術館杉並児童作品展の展示作業を行いました。ボランティアの人数に不安がありましたが、お友だち4人を誘って参加してくださった方もあり、予想を越えて18人が集まりました。
みなさんと力を合わせ、朝から設営、展示を進めました。受賞作品が目立つよう、また展示されたそれぞれの絵画が引き立つように、周囲の空間にも気を配って作品を飾りつけてくださる方、迎え花など一切の花のいけこみを担当してくださる方など、それぞれが持ち味を発揮して進めることができました。
翌日の表彰式には、来賓へのお抹茶の接待に回られる方、カメラを片手に記録を撮りながら、受付も手伝われる方など、みなさん臨機応変、互いに助け合いながら進めていきました。
授賞式に先立っていけばなの体験をお子さんにしていただきましたが、室内が美しい花々で溢れ、みんながなごみました。
授賞式では受賞した子どもたちの晴れやかな表情が印象に残りました。
授賞式後は、家族で作品を熱心に見てまわられ、特に自分の描いた絵を家族に褒められてうれしそうにしておられるお子さんや、家族で絵を見入っておられる姿、また賞状を広げて絵の前で写真撮影をされるなど、ご家族の笑顔を見ていると、“やって良かった、来年もこの情景を見させていただきたい”と思いました。
今回、いろいろな方からのアドバイスをいただき、みなさんと手探りしながら、時には全力を出し切って、ここまできました。これからもみなさんと楽しくやっていきたいと思います。