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自然農法の米づくり(育苗と除草)で反当り11俵を収穫する

2009.12.23

秋田県  Y・Sさん(70歳、女性)

 

〔自然農法の素晴らしさ〕

 私は30年ほど前から自然農法で稲作を始めました。自然農法による米作りで大きな課題は、育苗と除草対策でした。育苗については伊豆の国市にある大仁農場の技術的なサポートにより、安心して楽にできるようになり、除草も水田を観察し続ける中で、雑草が見えるか見えないかのうちに手押しの除草機を押し、2回目は駆動式の除草機を用いることで労力も減り、効果が上がることがわかってきました。農薬や化学肥料の経費がかからない分だけ、慣行農法よりも収益性が高くなってきています。
 平成14年には、水田のところどころで、1本の穂に2本ないし3本の副穂が出ていることに気づき、「穂に穂が出る」と、自然農法を提唱した岡田茂吉先生が言われたことはこのことかと驚き、自然農法に対する意欲がなお一層湧いてきました。
 ここ数年、田んぼでの稲姿からは一見そんなに収量があるようには見えないのですが、収穫すると、反当り10俵から11俵と、地域の慣行農家と同等かそれ以上にお米が取れるようになり、徐々に確固たる自信がついてきました。
 平成15年は、秋田県では珍しく台風が度重なって襲来しました。私の住んでいるK市でも、潮風による塩の害で、地域の慣行農法の水田では、全滅もしくはとれてもくず米程度にしかならないほど甚大な被害がありました。わが家の水田も被害が大きいとあきらめていましたが、収穫してみたところ、反当たり約6俵半の収穫があり、潮風にも強い自然農法の素晴らしさをあらためて実感しました。

 

〔地域に役立つ自然農法をめざして畑作も始める〕

 平成9年、私は実施面積を広げたいとの思いを持っていたところ、家の近くで、とてもきれいに管理されている6反(60アール)ほどの休耕畑を見つけました。“ここなら自然農法がまとまってできる”と思い、その畑を借りたいと夫に話したところ、そこは夫の友人のものであることがわかり、早速、相談してくれました。
 その方は、「その畑は1年に3回、お金を払って雑草の管理をしてもらっているので、使ってもらえるならうれしい」との返事で、無償で貸してくださることになりました。驚いたことに、その畑は12年間、除草剤や化成肥料などを使っていないとのことでした。偶然とはいえ、私の思いが天に通じたようで、元気が湧いてきました。
 その後、堆肥などを利用し土づくりに取り組み、その土地にあった、ジャガイモ、ニンジン、カボチャ、スイカ、サツマイモなどの野菜を中心に栽培しました。野菜は病害虫など大きな被害もなく順調に育ち大変美味しくできました。畑の一部を利用し少しでも景観がよくなることと、家庭や地域でいけばななどに利用してもらうことを願い、お花も栽培しました。
 畑からとれる農産物については“地域の人たちの健康に役立てたい”と思い、その活かし方について、役場の福祉課に相談に行きました。
 役場の担当者は、私の思いを汲んでくれ、地域の小中学校に連絡を取り、学校給食で使ってもらうよう手配してくれました。早速、その畑からとれる自然農法で生産したカボチャやジャガイモなどを提供するようになりました。
 年に何回か学校給食に招待してくれますが、子どもたちから届く感想文には、「嫌いな食べ物が減りました」「心がこもっていてとても美味しい」などと、作る人の心を感じてくれているようでとても嬉しく思いました。なかには「寒くなるので体に気をつけてください」と私たちをいたわってくれていることに驚きさえ覚えました。自然農法をやっていて本当に良かったと心から思いました。

 

〔子どもたちに農業の大切さを学んで欲しい〕

 こうした学校での交流から、子どもたちに直接土や作物に触れてもらい、食べ物がどのようにできるのか体験を通して知ってもらえたらいいなと思い、再び役場へ相談に行きました。早速、地域の幼稚園に声をかけてくれ、平成12年からは、幼稚園児の「サツマイモ掘り体験」を始めることができました。
 サツマイモ掘り体験は、「どのように生育しているのかわかってもらいたい」との園長先生のたっての希望で、つるを残したままで行いました。
 はじめは黙って立って見ている園児、キョロキョロと落ち着きのない園児、つるを思いっきり引っ張る園児など様々でしたが、お母さんや保育士さんと一緒になって掘り続ける中で、次第に歓声が畑に響きわたっていきました。後日、園長先生からも「作物を作ることは大変だけど、収穫の喜びは嬉しいものです。小さい時から土に親しんで作物を作ることを教えていくことは、将来、日本の農業を大事にしていく教育に繋がると考えています」とお礼のお手紙をいただきました。私たち夫婦としても、「自然農法を実施していて良かった。お陰でこんな素晴らしい行事ができた」と心から感謝しました。

 

〔地域への拡大を願って〕

 こうした活動をさらに地域へ拡大したいと願っていたところ、秋田市にあるA瑞泉郷で、県の進める子育て支援事業(「畑の学校・教育プログラム」)として、近隣の小中学校や幼稚園児を対象にした自然農法による農業体験教室が始まりました。そして、A瑞泉郷からの依頼で、私の畑でも受け入れることになりました。この年の秋は全部で9回、A市やK市の10の幼稚園から児童など1,038人を受け入れました。
 これらの幼稚園では、収穫したサツマイモを園に持ち帰って、後日「焼き芋会」を開いているそうですが、嬉しいことに、園児のお母さん方から「市販のサツマイモと味が違うね」とか、「スーパーに出してほしい」「場所を提供するので朝市をやってほしい」と求める声が高まってきて、実際にわが家まで買いに来られるお母さんも増えてきています。こうした声に応えるために、平成13年、自然農法普及会や地域のMOA健康生活ネットワークのみなさんと話し合い、この無償で借りている畑を園児だけでなく、地域の人々に開放することを決めました。
 みなさんの協力を得て、花の植込みや野菜の栽培管理を行い、きれいに整備されると、町内会の方々が見に来られるようになり、自然農法の畑にも関心が高まってきました。なかには「私たちも『畑の学校』のお手伝いさせていただくよ」と言ってくださる方もいて、スイカを収穫する夏の時期に合わせて毎年開催している収穫のイベントには一緒に受け入れをしてくれるようになりました。
 畑を貸してくれた夫の友人も、「畑がきれいに管理されて、社会に役立つ場所となっている」と、とても喜んでくれています。

 

〔家族が支え合って自然農法ができるようになる〕

 いつのことでしたか、夫婦で花屋の経営をしている娘が突然、「お母さんが自然農法をやれなくなったら畑や田んぼの土がもったいないから、私、引き継ごうかな。そのためにも、今から、どうすればいいのか、チャンと書きとめておいてね」と言ってくれました。そんな娘からの思いがけない言葉に驚くとともに、自然農法を何十年も継続している大切な土であり、それを一生懸命守り続けてきた私たちの思いが伝わっていたことを知り、本当に嬉しくなりました。
 さらに、夫の足の具合がおもわしくなく、トラクターに乗るのも大変になってきたことを心配した3人の孫(25歳、22歳、18歳)が、手押しの除草機で田んぼの除草をしてくれるようになりました。そして「土の感触がほかとは違うね」と言って、自然農法の土の素晴らしさを分かってくれたようでした。
 こうして、家族が支えあって自然農法ができるようになり、また、その話題で話が盛り上がるなど、楽しみが増し、夫婦揃って心から幸せを実感しています。